「華を織る」
04
丁度その時、扉を叩く音が響き、桜木と麻乃は同時に扉を振り返った。
『麻乃様、亜紀です』
「お待ちしてましたよ、どうぞ」
扉越しの亜紀の呼び掛けに麻乃が答え、程無くしてゆっくりと扉が開いた。漆黒の髪がその隙間から元気良く覗く。
「こんにちは、麻乃様」
「こんにちは、亜紀」
「ええと、‥‥」
言い淀むと、期待と不安の入り混じったような表情で、亜紀は黒い瞳を部屋の中へと彷徨わせる。
「、」
まるで自身の姿を探す様なその仕草に、桜木は思わず立ち上がっていた。
椅子と床が擦れる僅かな音に反応した亜紀は、直ぐに嬉しそうな笑みを浮かべると桜木へと顔を向ける。
「桜木様、お久し振りです」
「‥‥ああ。久し振り、亜紀」
ああ、良かった。
元気そうだ。
ほっと安堵の息を吐きながら再び座り直す桜木の様子に、麻乃は小さく肩を竦めると。
「さ、亜紀。こちらへ」
幼い友人を椅子へ導くべく、扉の方へと向かった。
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