「華を織る」
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「行ってきます!!」
元気の良い声と共に、亜紀は工房『織人』から往来へと飛び出した。
図書館から借りた点字本を大事そうに背負い、片手に持った杖をこつこつと軽く響かせながら都城へと足を速める。
今日は織物の届け物は無いのだが、麻乃の元へ訪れる約束をしていたのだった。
『桜木もこの日なら来られますから』と微笑みながら言う麻乃の声を思い出し、亜紀の顔にも自然と笑みが零れる‥‥遠い町のお話、聞かせてもらおう。
「亜紀や、亜紀」
足早に工房を後にする亜紀だったが、その背中をしわがれ声が呼び止めた。
ゆったりとした動作で屋内から出てきたのは、工房所属の老織師。日毎に強さを増す陽光を眩しげに見上げながら、よっこいせと腰を伸ばす。
「和爺様、どうしました?」
「忘れ物じゃよ、亜紀。大事な物なんじゃろう?」
「大事?‥‥あ!布!!」
一瞬不思議そうに首を傾げた亜紀だったが、はたと思い至ったらしく慌てて老人の元へと戻る。
「ほうれ。机の上で置いてけぼりを喰らって、寂しそうにしておったわい」
「すみません、和爺様」
「なんのなんの。亜紀の愛しい祈りの込められた布じゃからのう?」
「い、愛しいって!別に俺はただ、桜木様の安全を祈っただけで、そのっ」
「ほ、ほ、ほ、ほ。若いとはほんに良い事じゃ」
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