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「華を織る」
06

◆◆◆◆◆



 窓から吹き込む柔らかな風に、手元の書類が数枚巻き上げられた。
「あ、」
 慌てて抑えようとしたが既に一息遅く、風に乗った紙ははらりはらりと部屋中に散らばる。
 小さく溜息を吐きながら椅子から立ち上がった麻乃は、床の上にしゃがみ込むと書類をかき集め始めた。
 その足元にするりと擦り寄って来たのは、小さな茶縞の仔猫。


 なおん。


「ちょっと派手に散らばってしまいました」
 どうしたの?と小首を傾げながら見上げてくるつぶらな瞳に、麻乃は思わず手を止め微笑んでいた。
 そっと華奢な喉元を撫でると、気持ち良さそうに琥珀色の瞳が細められる。
 ――本当に綺麗な色。宝石の様ですね。
 心の中でそう呟いた後、再び紙へと手を伸ばしかけ‥‥ふともう一度仔猫を振り返る。


「‥‥琥珀?」
 麻乃の囁き声に、仔猫はまるで返事をする様に、なおんと鳴いた。
「琥珀。そうだ、琥珀という名前はどうでしょう?」
 なおん。
 なおん。
 まるで気に入ったと言いたげに二度鳴くと、仔猫は麻乃の手の甲にじゃれる様に頭を擦り付けてくる。
「蒼川殿が帰ってきたら、伺ってみましょうね」
 嬉しげに微笑むと、麻乃はもう一度、仔猫――いや「琥珀」の頭を優しく撫でた。




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