「華を織る」
02
追い風を受けた帆は抜ける様な青空を背に気持ち良く広がり、頭上高く昇る太陽は目映い恩恵を惜しみなく注ぐ。
遠く水平線近くに白い雲が見えるが、うっすらと刷毛で掃いた様な薄い筋雲であり、雨の心配は暫く無さそうだ。
頬に当たる風は微かに冷たさを含んでいるが、そのひんやりとした肌触りがひどく心地好い。
空は高く。
どこまでも遠く。
――これが、海。
「‥‥海、か」
小さく呟きながら、少年は改めて海面を眺めた。
水平線のその又向こうから際限なく永遠に寄せ来るのは、細かな白い泡巻く波頭。
やがて船頭で砕けた波は無数の飛沫となって弾け、光を受けた一粒一粒が真珠のように煌めく。
真下を覗き込めば、ゆらゆらと揺れる紺碧の向こう側に、奥深くに横たわる海底が透けて見えそうだ。
――星もそうだけど、海もそうだよな。
じっと波を見詰めながら、少年は心の中で呟く。
すぐそこに見えているのに、驚く程に遠い。
手が届きそうで、届かない‥‥
「?」
おや、と少年は身を乗り出した。
何かが、波の間できらりと閃いたような気がしたのだ。
何だろう、魚の鱗が光を受けたのか。
それとも何か、別の物が‥‥?
「‥‥」
縁に手を掛け、もう少し良く見てみようと身体を傾けかけた時。
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