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「華を織る」
05

――無念だったろうな。
 織子の幼馴染の心情を想像しながら、桜木は心の内で呟く。
 護りたいという意思と護る為の道具はあるのに、護りきれなかった。
 慣れない手つきで剣を振るいながら、己の無力さにどれだけ打ちのめされていた事だろう。


 もしも剣の扱いに長けていれば。
 もしもその能力を存分に生かす事が出来たなら。
 もしも、もしも、




『――もっと力があれば‥‥』




「‥‥?」
 ふと、桜木の中を何かが掠めた。
 そういえば俺、同じ様な事を最近どこかで聞かなかったか‥‥?
「?どうしました、桜木」
「え?ああ、いや、なんでもない」
 一瞬、何かを思い出しかけた桜木だったが、しかし訝しげな麻乃の声に記憶の欠片は再び底の方へと潜って行ってしまった。


「それで、詳しく知りたい事とは?」
「あの神話、地方によって内容が少しずつ違うのだろう?」
「ええ、織子は女性だったとか、城を襲ったのは嵐でなく地震だとか、攫われたのは幼馴染ではなく織子の兄だったとか、地方によって色々な話が伝わっていますね」
「その中に、織子を護る人間が出てくる話ってあるのか?」
「ええ、ありますよ。どこの村かは忘れてしまいましたが、確か西風との国境付近だったはずです」
 西風との国境付近?という事は玉城近くかもしれないぞ‥‥頷く麻乃に、それじゃあと桜木は思わず身を乗り出す。



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