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「華を織る」
06




――『亜紀?』




「っ、」
 ふいに耳へと蘇った声に、亜紀ははっと顔を上げた。この声は誰の物だったかと記憶を探り、一人の人物へと辿り着く。
「‥‥桜木様の声か」
 ああ驚いたと息を吐きながら、でも何で桜木様の声が出てきたんだろう?と首を傾げ‥‥直前まで自分が考えていた事に思い当たる。
「自分好みの‥‥声?」




 あれ?
 あれれ?




「ええええっ??」
 思わず大声を上げ掛けた亜紀は慌てて口を両手で塞ぎながらも、ええええ??と頭の中で叫び声を上げ続ける‥‥と、言う事は。
「俺、桜木様の声、好きなんだ‥‥」
 声に出して呟いた瞬間、亜紀の心の奥が小さく低く、しかし確実に甘やかな音を立てた。
「、え?」
 今までに感じた事の無い感覚に、亜紀は思わず肩に掛けた長布の端を握り締める。
 そのまま暫くの間、道を見失った幼子の様に頼り無げな表情を浮かべたまま身動ぎもせずにいたが。


「‥‥帰ろう」


 やがて頬に斜めに当たる夕日に気付くと、一旦総てを頭から追い払う様に黒髪を左右に振った亜紀は。
 まるで何かに急かされる様に足を早めると、杖の音を小さく響かせながら花壇の前を離れていった。






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あきゅろす。
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