[携帯モード] [URL送信]

「華を織る」
03


 あっけらかんと言い放った帝妃は、だってねえ、と悪戯っぽい口調で続けた。
「なんせ初対面でひっぱたいちゃったからね、私」
「ええっ?」
「陛下が本を破いていた場面にたまたま遭遇したのよ。まあ、後で聞けば理由はあったんだけど、私も若かったからついかっとなってねえ。まさか陛下――ああ、当時は殿下だったけど――だとは思わなくて」
「それで、どうなったんですか?その後」


 興味津々に聞く亜紀に、ふふふふと帝妃は肩を竦めて笑う。
「その日の夜は不敬罪で捕まるんじゃないかって、心配で眠れなかったわね。でも特にお咎めは無かったわ。樫山様には、ちょっと怒られたけど」
 あの時の樫山様は怖かったわねえと、懐かしげに微笑みながら翠茶を飲む帝妃に対し、亜紀は少し考え込むような表情を浮かべた。
「あら、どうしたの?亜紀。難しい顔して」
「‥‥帝妃様、その後は?」
「その後って?」


 不思議そうな帝妃の言葉へ、亜紀は暫く逡巡した後に躊躇いつつも口を開いた。
「あの、‥‥陛下に対して萎縮とか、しなかったのですか?」
「いいえ、そのままよ。だっていきなり態度を変えたら、何だか悪いでしょう?不敬罪かもってどきどきしながら言いたい放題にしていたら、何故か求婚されちゃったわけ。人生ってよくわからないわ」
「そう、ですか‥‥」
「最初は怖かったわ、色々と。身分が違い過ぎるもの。でもね、やっぱり――」





[*前][次#]

10/52ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!