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「華を織る」
06




 補佐役の掛け声と供に緊張の弛んだ空気の中、慌ただし気に席を立って行く者、親しい相手と挨拶を交わす者、詳細を詰めようと頭を寄せ合う者と、会議後の室内は低いざわめきに満たされ始める。
「‥‥ふう、無事に終わったな」
 そんな中、宮古から強制された着慣れない正装の肩をやれやれと回していた桜木は、近寄ってきた銀髪翠眼の友人のこれまた正装した姿に、にやりと笑ってみせた。


「互いに柄でもない服装をしているな」
「ああ全くだ。窮屈で敵わん」
「何をおっしゃいますか、二人共大変お似合いですよ。少なくとも普段の簡素極まり無い格好に較べれば、よっぽど四剣らしく見えます」
 すかさず横合いから入った宮古の容赦無い言葉に、思わず首をすくめる桜木と蒼川である。


「しかし、思ったよりも速く片付いたんだな、野盗」
「ああ、沢渡と宮古が大活躍してくれたからね」
「‥‥その事なんですが、」
 丁度良い機会とばかりに、桜木へと詰め寄る宮古。
「何で俺も女装しなければいけなかったんです?沢渡は似合うし乗り気だったから良いとしても」
「いや、お前も十分似合ってたぞ?」
 しれっと言い放つ桜木を、宮古は軽く睨み付ける。


「そういう意味ではありません。あの作戦なら、女装は一人でも十分だったのではと申し上げているのです」
「でも二人の方が話題性があるじゃないか、亡き父への想いを胸に、美人姉妹の弔い旅。良いねえ、美談だねえ、泣けるねえ」
「‥‥もしや本気でおっしゃってます?華剣」
「勿論」
「‥‥」
 大真面目に頷く上司に対し、もはや深い溜息しか出てこない宮古である。


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あきゅろす。
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