「華を織る」
02
「ええ。爽やかで清潔感のある好青年として国民から強い支持を得ていますが、この各地への訪問が国民に親近感を与え、人気に更なる拍車を掛けているようです」
「清廉で親しみやすい若将軍、というわけだ」
「はい。最近では白夜隊長が気に入りらしく、事有る事に連れ回してる様です」
長官からの補足に頷きながら、天帝は桜木へと視線を向けた。
「どうだ?華剣・桜木。直接相対した虹将軍の印象は」
「ええ、長官のおっしゃる通り、爽やかで人懐こい印象を受けました。表情は明るく、声も澄んでいて良く通り、明瞭快活。西風の国民から人気があるのも分かります‥‥が、」
「しかし何かあると?」
考え込む様な表情で告げた桜木に対し、天帝は促すように問い掛ける。
「何かと言うか何と言うか‥‥恐らく将軍の言動は総て冷静に計算され尽くしています。人を惹き付け、その心を掌握する能力がすこぶる高い。見た目通りの単なる好青年では無さそうです」
「腹に一物あるって事か」
「ええ、自分の外観の効果を十分に把握した上での緻密な振舞いと感じました」
些か険しい表情を浮かべる桜木を横目で眺めながら、宮古は夕陽に染まる峠道での言葉を思い出していた。
――『俺はさ、ああいう奴が、実は一番恐ろしいと思うんだ』
――『あの男は近い将来、西風の上に立つぞ』
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