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「華を織る」
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「‥‥で、今は警備隊内に身柄を拘束しています。全員西風の者で、政情不安から来る不景気で職を無くし食うに困った挙げ句の暴挙でして、確実に荷を奪える老人や高く売れそうな女性の隊ばかりを狙ったそうです。俄集団の為、通行料の発想は無かったようで‥‥」


 東雲の主だった文武両官を集めて行われる、定例の政策会議。
 その席上で先日遂行された野盗討伐の報告を一通り終えると、桜木は上座に座る天帝を窺った。
「――以上です、陛下」
 報告書を眺めながら熱心に桜木の声に耳を傾けていた天帝だったが、やがて顔を上げると満足気に頷いた。


「ご苦労だったな、華剣・桜木。沢渡や宮古も本当に良くやってくれた」
「はっ」
「今回の任務に参加した剣士達全員にも、後日改めて礼を言わせて貰おう」
 簡潔ながらも心の込められた労いの言葉に、三者が一斉に頭を下げる。
 その様子に微笑みながらもう一度頷いた天帝は、ところでと手元の報告書を捲った。


「首領達を捕らえた直後に、虹将軍と白夜隊長と接触したとの事だが」
「状況が状況でしたので、挨拶を交わした程度ですが」
「本人に間違いないのか」
「はい、腕に白銀の腕章がありました。それにあの場でわざわざ嘘を名乗り出る利もありませんし」
「確かにな。‥‥虹将軍、か」
 ふうむ、と唸りながら天帝は椅子に深く座り込む。「――将軍自ら国境の峠に来るとはね」
「その事ですが、」


 挙手をし発言を求めた情報部門の長官は、天帝に向かい一礼すると口を開いた。
「報告によれば、虹将軍は情報収集に熱心な性質の様です。西風各地を積極的に行脚していますし、四国だけでなく南方大陸も詳細に調べている様です。今回も我が国側になった玉城を、実際に自分の目で確認したかったのではないでしょうか」
「可能な限り自ら動く、か。西風の将軍にしては珍しいな」

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あきゅろす。
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