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「華を織る」
03


「ちょいと旦那ぁ、いくら美味いからって、あんまり飲みすぎちゃ駄目ですよ?」
「そうそう、旦那は酒に弱いんですから」
「あと、女にもね」
「このお酒は俺達が責任持って頂きますから、お気になさらず」
「‥‥お前ら、ちょっと黙ってろ」
 横合いから部下達に口々に茶々を入れられ、矢崎は拗ねた様に杯を両手で抱えた。


「――矢崎殿は随分と慕われていますね」
 そんな和気藹々とした旅商人達を眺めながら、宮古は愉し気に笑う。
 野盗を捕らえた事への安堵からか、はたまた丸一日発声を禁じられていた事への反動か、普段よりも幾らか口数が増えている様である。
「いやいや、どうも威厳が足りないようで舐められてばかりですよ。‥‥しかし、良い自慢話になりました。四国最強の剣士様達と、噂に名高い華剣様にお目にかかれたなんて」
「その上、野盗も退治してもらいましたしね」
「これであの峠を安心して通る事が出来ます」


 敬意を込めた矢崎の言葉に、部下達も口々に賛同しながら大きく頷く。
 とは言え旅商人という諸々に縛られない強かな生き方をしている為か、『華剣』を前にしても彼等はさほど物怖じしていない様である。
 今までに幾度も自分の称名を名乗った途端、手の平らを返した様に態度を変えられてきた桜木にとって、その隔ての無さは心地好いものだった。
 酒杯を片手に、改めて矢崎の方へと身体を向ける。


「そう言えば矢崎殿は、南波の珊瑚を運ぶ途中とか」
「ええ、なかなかの上物があがりましてね。他にも東雲で細工した真珠や玉石を、西風へ売りに行こうと思いまして」
「何故わざわざ東雲で細工を?」
「細工師の腕前は、東雲が抜きん出てますからねえ。敵国だ何だと言いましても所詮お偉方同士の話でして――っと、剣士様を前に言っちゃまずい台詞でしたな――うちら庶民には関係ありませんし。西風では東雲の細工物が大人気なんですよ。‥‥とは言っても最近の西風は不景気で、なかなか贅沢物は売れませんがね」


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あきゅろす。
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