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「華を織る」
03


「そう、俺達は東の剣。天帝の命によりあんた達を討伐に来た。‥‥おっと、動かないでよ?」
「っ、」
 咄嗟に逃れようとした男の進路に、三重は威嚇する様に剣を向けると脚の動きを封じ込めた。
 大柄な首領の男と小柄な三重では、見た目にもはっきりと判る程に歴然とした体格の差がある。
 しかし彼等の間には、その差以上に技量の隔たりがあった。
 男の額に冷たい汗が浮き上がる。


「首領!」
 無法者とは言え自分達を束ねる頭の危機に、部下達は慌てて救出に向かおうとする‥‥が、その途端、崖の両側を占める木立の間から幾つもの悲鳴が上がった。
 山中を駆け上がってきた剣士達が、木立に身を隠していた野盗達へ次々に斬りかかったのである。
「、くそっ」
 やがて反撃の困難さを悟ったらしい、いまだ動く事の可能な者達が一斉に山道からの離脱を図り始める。
 しかしその逃走は最後まで遂げられぬまま、強制的に止められる羽目となった。


「はい、そこまで」
 音も無く背後から忍び寄ると、苦もなく長剣を野盗の首筋に押し当てたのは、赤銅の髪に山吹色の護布を巻いた男。
 頬を斜めに走る古傷が彼の歴戦を物語っているが、その瞳はあくまで明るく陽気な茶色だ。
「お見事、沢渡。‥‥ほとんど二人だけで片付けちまったな」
「もっと早く出てきて下されば良かったのに、華剣」
 三重――もとい、沢渡が首を竦めながら言う言葉に、華剣・桜木は小さく苦笑した。
「いやそれが、荷馬車の中って結構窮屈でさ、あちこち固まっちゃって固まっちゃって」


 幾人かと荷馬車の中に隠れていた桜木は、肩凝ったなあと首を回す振りをする。
「じゃあ、早速纏めるか」
 そのまま手早く捕らえた野盗を縛り上げると、他の剣士達も同じ様に、痛みに呻く男達を手際良く拘束し始めた。
 生け捕りにするようにという桜木の指令通り、沢渡の剣は野盗達の戦闘能力は奪ったものの、命には別状の無い状態に止めてある。
「‥‥相変わらず、可愛い顔して怖いねえ、沢渡」
「ありがとうございます」
 微笑みながら無邪気に一礼する沢渡からは、先程までの殺気は欠片も見当たらない。



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あきゅろす。
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