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「華を織る」
04

◆◆◆◆◆


 道中野盗にも襲われる事も無く、これと言った難事も無く、一同の峠越えは順調に進んで行った。
 姉妹の荷馬車は矢崎の当初の見立てよりも速く進み、一番の難所である曲がりくねった崖道も無事に通り抜け、日が傾く前には遥かに次の宿場町を見下ろせる場所まで辿り着いたのである。
「頑張ったなあ嬢さん達。ほら、あそこに見えるのが今夜泊まる町さ」
「まあ、綺麗ですね」


 眼下に広がる小さな宿場町は、微かに橙色味を帯びた午後の陽射しを受けて、川面や白壁が眩しく輝いている。
 その宝石にも似た柔らかな佇まいに、三重も思わず感嘆の声を上げた。
「ねえ、姉さん見て!ほら、小川があんなに‥‥姉さん?」
 はしゃいだ声のままに振り返った三重は、しかし隣に座った姉の只ならぬ様子に慌ててその手を取った。


「姉さん?どうしたの?」
 口元を布で押さえ苦しそうな表情で俯いている八重、その整った額にも玉の様な汗が浮かんでいる。
「大変、急いで薬を飲まないとっ」
「?どうした、大丈夫かい?」
 二人の様子がおかしい事に気付いたらしい、怪訝な表情を浮かべた矢崎が駆け寄って来た。


「姉さん、熱でも出たのかい?腹でも壊したかい?」
「姉は昔から身体が弱くて‥‥最近は安定していたんですが、今回の旅でかなり無理をしてしまったようで、」
 経緯を説明しながらも、三重の手は慌しく荷物袋を漁り目当ての薬包を取り出すと、水筒を姉の唇に当て手際良く飲ませる。
 やがて姉の頭を自分の膝の上へと乗せると、そのぐったりとした身体にそっと毛布を掛けた。
「――取り合えず、これで安静にしていれば大丈夫なはずです。すみません、久し振りだったので慌ててしまって‥‥ご心配をおかけしました」
「あ、ああ‥‥それなら、良いんだが」


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あきゅろす。
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