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「華を織る」
06




「――本当の事を言わなくて良かったの?姉さん」
 再度矢崎に礼を述べた後、宿屋まで送って行くと言う商人達の声をにこやかに辞退しながら酒場を退出した姉妹だったが、道すがら、ふと妹が姉を振り返った。
「‥‥」
 黙ったまま静かに首を横に振る姉に、でもと妹は言葉を重ねる。
「せめて矢崎様にはお伝えした方が良いんじゃ‥‥絹織物以外にも、北雪の宝玉を、」
 そこまで言いかけた妹の口を、姉は伸ばした指先でそっと止めた。そして再び首を横に振る。


「‥‥分かった」
 渋々と言った風ながらも年長者の主張に頷いた妹に、姉はその頭を優しげに撫でた後、帰路を促すようにその背に手を当てた。







「‥‥」
 やがて、二人が去った後の夜闇の中で。
 一つの気配が静かに立ち上がり、音も無く去って行った事に気づいた様子も無く。




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あきゅろす。
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