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「華を織る」
04


「――そうだ嬢さん達、一つ意見を聞かせて貰いたいんだが、」
 陽気に続いていく会話の途中、ふと思い付いたように一人の商人が傍らの荷物袋を引き寄せた。
「こいつら、どう思う?城下でも売れそうかね?」
 言いながら取り出したのは、幾つかの女性用の装飾品。
 光沢を帯びた乳白色の石に華奢な銀細工を施した其らは、店内の灯りを受けて柔らかく輝いている。
「まあ、綺麗な首飾り!こっちは帯留めね。指輪も素敵」
 手元を覗き込んだ三重の上げるはしゃぎ声に、商人は自慢気に頷く。


「玉城が東雲に戻ってきてから、初めて採掘された物だよ」
「え、玉城って、あの玉城ですか?」
「ああ。城の細工師が加工したんだが、なかなかの出来だろう?」
「ええ、控え目で、でも華やかで。若い女性の間で流行りそうですね」
「そうかい、流行りそうかい。うん、やっぱりこういうのは実際に身に付ける女性に聞くのが一番だよな」
 うんうんと納得した様に頷いている商人の後ろから、そういえば、と矢崎が顔を覗かせた。あまり酒には強くない体質なのか、日に焼けた顔には赤味が差している。


「玉城って言えば、俺、奪還戦の時にちょうどこの町にいてさ。近くの丘から遠目にだが観戦していたんだ」
「ええっ、そりゃ本当かい?矢崎」
 思いがけない言葉に、商人達は一斉に声を上げる。
 質の良い商品だけでなく、住民の気を引く話題も仕入れる必要のある彼等にとって、これは格好の情報だ。


「で、どうだったんだ、奪還戦の様子は」
「凄かったかい?音とかも聞こえたのかい?」
「ああ、風に乗って合図笛や歓声が時々聞こえたよ。夕方になると抜き身の刃が陽を反射して、きらきら輝いていて。ちょっと不謹慎かもしれないが、それが本当に綺麗でさ。そのうち閧の声が城から響いてきて、『奪還だっ!』って周りの奴等とはしゃいだもんさ」
 その光景を思い返しているのだろう、遠い目をしながらも嬉しそうな表情を浮かべる矢崎に、周囲はへえええと声を上げた。


「あの奪還戦、華剣様が指揮を取っていたんだよな?」
「華剣様かあ。本当にお強いお方だよ。西風からは鬼神の様だと恐れられているらしい」
「それでいて、なかなか気さくな方だと言う話だぞ」
「なあなあ嬢さん達、都城に住んでいるなら、四剣様を見たことがあるかい?」
「、え?‥‥え、ええ、はい」
 ふいに話題を振られた為か、少し慌てた様にしながらも頷く三重。


「何方が好みなんだい?やっぱり容姿端麗な舞剣様かい?」
「そう、ですね‥‥。女性は皆さんそうおっしゃいますが、私は豪剣様が一番ですね」

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