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「華を織る」
2


「なんだいなんだい、横で聞いてりゃ泣かせる話じゃねえか」
「親孝行な娘っ子達だよなあ?」
「ま、無謀って言やぁ、無謀な話だけどな」
「で、運ぶ品は何なんだい」
「確か、城下の絹織物とか言っていたぜ」
「ほう、城下の品なら質も確かだな」
 酒杯片手ながらも束の間商人の顔に戻り、互いに深く頷き合う商人達。
 やがてその中の一人が、彼等にとって今夜最大の関心事を口に乗せた。


「――ところでその姉妹、二人とも美人っていうのは本当か?」
 ついに出た話題へ興味津々に身を乗り出した商人達の視線は、仲間内で一番の早耳を誇る男へと集まる。
「ああ、かなりの別嬪だって、門番のじーさんが喚いてたぞ」
 深く頷いた男に、歓声とも驚きともつかない小さなどよめきが起こった。


「ふん、どうやら本当らしいな」
「ああ、じーさんの見立てなら間違い無いだろう」
「この前噂になった奥方は、ちょいと行き違いがあったからなあ」
「あははは、確かにありゃあ酷かったよな」
 先日同じ様に美人との噂が上がった某商人の奥方が、全くの期待外れだった事を思い出し、商人達は無遠慮にどっと笑う。


 ‥‥そして、その笑い声が酒場の天井に木霊している隙を狙うかのようにして、静かに扉は開かれたのであった。



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