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「華を織る」
05


「そうだわ、樫山様と対でなさったら?昔はよくやってらっしゃったじゃない」
「いや、しかし、」
 慌てて帝妃の言葉を遮った天帝は、同じく唐突な名指しを受け戸惑いの表情を浮かべる樫山と視線を交わす。
「あら、皆も見たがってると思うわ。――ねえ?」


 帝妃の最後の呼び掛けは候補生へと向かって投げ掛けられたものであり、天帝の剣型を拝見出来るとは何たる幸運だと勿論異存のある者など一人も無く。
「・・・・藤緒」
「何かしら?陛下」
「いや、何でもない」
 にっこりと微笑む妻に見送られ、渋々樫山の待つ輪の中へと歩いてゆく羽目となった天帝であった。





「樫山、練習用のを一振り貸してくれ」
「よろしいので?陛下」
「ここまで言われて引き下がる訳にはいかないだろう」
「畏まりました」
 諦めた様な天帝の言葉に苦笑混じりに頷くと、一度輪の外へ出た樫山が掴んできたのは、二振りの刃を潰した練習剣。
 一国の主に万が一の事があってはならないと考慮したのだろう、真剣の使用は流石に止めたのであった。


「・・・・ああ、久し振りだな」
樫山から受け取った練習剣を握ると、ふと天帝は懐かし気な表情を浮かべる。
「昔は毎日毎日、遅くまでお前と剣を交わしていたっけ」
「ええ。よくお相手して頂きました」
「しかし大丈夫かな。随分と握っていない気もするが」
「案外、身体が覚えているものですよ」



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