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「華を織る」
01 ◆2◆
◆2◆


 きぃぃんっ、と金属同士のぶつかる高い音が、訓練所内に鋭く響く。
 豪剣・樫山の繰り出した槍が、舞剣・蒼川の操る双剣によって弾かれた音だった。


 きん。
 きぃん。


 一撃を払われた樫山は、しかし体勢を崩す事無く、直ぐ様連続の突きを蒼川へと浴びせる。
 重量級の槍を軽々と振るう樫山の技量も相当だが、それらを尽くかわしてゆく蒼川の速さも尋常では無い。
 無駄の無い狙い済ました攻撃と、紙一重でかわす隙の無い防御。
 練習試合とは言えども、掠れば切傷如きでは済まされ無い、しかし滞り無く流れるような真剣同士の息詰まる攻防が続いて行く。


「‥‥速い」
「すごいな」
 二人を取り巻き、食い入る様に見詰めている候補生達の間から零れる溜め息混じりの感嘆で、訓練所は徐々に熱気を帯びてゆく。
 そんな若き剣士の卵達を驚かさない様にそっと、桜木と清水は静かに訓練所へと足を踏み入れた。




 訓練もある程度進んだ所で行われる、候補生同士での真剣を使用した練習試合。
 その模範試合として、教官役である四剣同士が手始めに刃を交わすのが、東の剣での通例となっていた。
 用心棒や警護を生業としていた者はまだしも、町の道場等で腕を磨いていた若者の中には真剣を他人に向けるのは初めてだという者も居り、戸惑いや恐れを抱く者も少なく無い。
 各々の武器に対する心構えや態度、適性が明瞭に判る反面、過剰な反応や見誤り等により診療所へ担ぎ込まれる程の怪我を負う事もあり、候補生にも指導する側にとっても、非常に神経を遣う試合であった。




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あきゅろす。
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