「華を織る」 01 ◆7◆ ◆7◆ 「次は?」 「ええと、・・・・あ、これです、『服飾の歴史』」 「桜木、三列の二段目です」 「三列の二段ね。・・・・これで良い?」 程なくして桜木が本棚から抜き出してきた一冊を受け取り、題名を確かめると、麻乃は傍らの机の上に――既に数冊の本が重ねられている――そっと置いた。 「それから?亜紀」 「あとは、『絵画に見る婦人服』」 「六列五段目です」 「はいはいはい・・・・これかな」 「あ、二冊組ですよ、桜木」 「二冊?・・・・ああ、本当だ」 本棚の間に姿を消した桜木は、二冊の本を両腕に抱えると再び麻乃と亜紀の元へと戻ってくる。 麻乃の部屋を出た三人が向かった先は、図書館一階の奥に設けられている「点字室」。 「少し手狭ですが」と言いながら麻乃が開けた扉の中に桜木が見たものは、幾重にも連なった天井まで届く重厚な書棚の列だった。 「なあ麻乃。これ・・・・全部?」 「いえ、地下書庫にも若干収めてあります」 「まだあるのか」 さすがは東雲一の図書館、侮れないなと内心呟く桜木である。 「うわあ、本当だ、広い部屋ですね」 声と杖の反響で部屋の広さを測ったのだろう、こつこつと杖で軽く床を突いていた亜紀も、珍しげに部屋の中を見渡した。 「すごいな、別館とは規模が全然違います」 「麻乃、この部屋のどこが手狭なんだよ。これだけあれば充分じゃないか」 「まだまだ網羅出来ていませんよ。――さ、亜紀、こちらへ」 「あ、はい」 [*前][次#] [戻る] |