[通常モード] [URL送信]

「華を織る」
05


 不意打ちを食らい、一瞬、唖然とした宮古が慌てて我に返り叫んだ時には、既に桜木の姿は扉付近には見えず。
 暫く後、弾む様な足取りで詰所を離れて行く後ろ姿だけが、窓越しに遠く窺えた。
「‥‥本当に桜木は書類処理が嫌いなんだね」
 小さくなって行く姿を、眼鏡越しにのんびりと眺めながら清水は可笑しそうに笑う。
「まあ俺も好きじゃないけど、奴のは筋金入りだな」
 同じく窓際へ寄りながら蒼川は納得した様に頷く。


「しかし、どこへ行くんだろうね。あんなに嬉しそうに」
「あの方向なら、図書館だろうな」
「お礼に行くのかな。今回は随分と麻乃殿にお世話になっていたみたいだし」
「帰って来ないかもしれないな、あれは」
「あ、やっぱり蒼川もそう思う?」
「まあね。書類も大分片付いてるし‥‥あーあ、俺も一緒に行けば良かった」




「だから皆さん、仕事して下さいっ!」




 もう暫くの間は。
 東の剣は平穏そうである(‥‥ただし、宮古を除いては)。



[*前][次#]

31/64ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!