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「華を織る」
01 ◆5◆


◆5◆


「華剣、こちらの書類もお願いします」




 麻乃と亜紀が、幾らかの遠慮と躊躇を滲ませつつも順調に交流を深めていた、丁度その頃。
 自席の未決裁箱へと景気良く書類を積んでゆく副官の張りのある声を聞きながら、桜木は投げ遣り気味の深い溜め息を吐いていた。
「‥‥これで終わり?」
「何をおっしゃってますか。まだまだありますよ」
 一縷の望みを託した視線を送るも、有能な副官の言葉は相変わらず明瞭に容赦無い。
 今日も鮮やかな事務処理能力を発揮しつつ、桜木が最短の時間で決裁出来るよう書類の整理分類に勤しんでいる。


「それにしてもお前は本当に優秀だね、宮古。都城の文官達も舌を巻くよ」
「余計な愛想おっしゃってないで、華剣もそろそろ本気を出してください。このままじゃ未決裁書類が溜まる一方です」
「俺はこれで能力限界、精一杯なんだけどなあ」
「大丈夫、能力は充分におありですから、まだまだやれば伸びますよ」


 まるで要領の悪い幼子を諭すような宮古の言い方に、桜木は思わず黙り込み、豪剣・樫山は肩を竦め、静剣・清水は微笑み、舞剣・蒼川は遠慮無く声を上げて笑う。
 ‥‥玉城奪還より幾数日、落ち着きを取り戻した「東の剣」詰所では大まかな事後処理も一段落し、今では細々とした書類整理や雑務が残るのみとなっていた。
 万一に備え再奪還への警戒は緩めてはいないが、案の定、内情不安な西風からは攻撃の気配が無く、東雲は取り敢えず平穏だ。




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