オリジナル
騒がしくても、朝は朝
今日はいい事がありそう、なんて思ってしまう程に心地のよい快晴の下、本日も五人組は元気です。



騒がしくても、朝は朝




朝から不穏な雰囲気を漂わせ、降三 諒に背後から近づく影が3つ。


「「「まーこーとーっ!」」」

「ぅおっ!?」


背中から押され、バランスを崩した諒は地面とおはようの挨拶を交してしまった。

誰だ、なんて声を張り上げなくてもこの声の主らは熟知している。

頭を抱えたくなったが、未だ解放されない三人分の重さに体が自由になることはなかった。



「「「おっはよー!」」」


背中の上から聴こえる高めな声から、自分の勘に間違いはなかったと少し冷静に思った。


「おはよーじゃねぇよ!透っ!譲っ!護っ!」



「「「諒ちゃん、こわーっい」」」




諒の予想通り、愛染倉透・元帥譲・元帥護の三人だった。

楽しさで弾む声により、諒の怒りはさらに増した。



「お前ら退けぇえっ!ぅ、ぐえっ!?」



力の限り叫ぶ、とその時、新たな重みが腰辺りにかかった。

「あははっ!諒、カエルみたーい!」

「…(殺す!)」



言葉にならない怒りが込みあげる。


「あ、暁ちゃんおはよー」
「って、暁ぁっ!テメェかぁあ!」



通りで比重が違うと思ったわ!と、ますます声を張り上げる諒。

何故なら学年で1・2を争う身長の持ち主、不動暁までもが悪ノリに参加したからである。

楽しそうな彼らとは逆に、先ほどから学生達は彼らを綺麗に避けていきます。




「…」

「ん?うん。…諒、」

「あ?何だよ」



苛々が最高潮の諒は暁から言付けを受けた透へ対しての返事もそっけなかった。

それでも透はご機嫌な様子で続ける。



「暁ちゃんが、おはようって」

「え?あぁ、おはよう暁、って俺の上に乗ってるぐらい近いなら普通に言えぇっ!!」



血管がぶち切れそうな程に叫ぶ諒。

背後の爆笑に更に怒りは込み上げた。


「ふふふっ」


騒がしい五人の頭上に控え目な笑い声が降った。


「諒先輩、おはようございますぅ★」

「あ?…威徳か、おはよ」


甘ったるい声で諒にのみ挨拶する、2年生の威徳知哉。

「僕たちもいるのにな、譲」
「気付いてないバカいるしな、護」

それをさも面白くなさそうな声音で反感する双子。


「何か言ったか?」
「「べっつにー!」」


つまらなくなった、とばかりに諒の背中から同時に退いた譲と護。

二人分の重みは消えたことに安堵の息を漏らす諒を、二人は同時に叩いた。


「いってぇ!…護!譲!」
「「諒なんか遅刻して怒られちゃえー!」」


諒達を置いて、教室へと急いだ。


「は?あっ!時間!〜っ、透と暁も退け!遅刻だぞ!」

「はいはい」

「…」


慌てる諒とは真逆に、HR開始5分前とは思えぬ落ち着きを見せる透と暁。



「威徳、」
「は、はいっ」



「お前も急がねぇと遅刻するぞ」


諒の手が頭に置かれ、赤面する知哉。



そう、知哉は諒にとてもとても憧れているのだ。

そんな光景を尻目に、透は暁へ合図を送った。


「諒!」

「え…ぅ、うわあああっ!」



諒は急に地に足が着く感覚がなくなったため、状況を見ると、暁に透もろとも担がれ疾走されていた。


「これなら最短で着けるな!」


確かに、暁の脚力なら例え後3分だろうと教室に着けるであろうが…




「普通に運べぇぇええっ!」





諒の虚しい叫びは、廊下に木霊し、消えた。









-END-


あきゅろす。
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