立海
息など出来ない程に、溺れ、
「すまんのぅ」

「いえ、構いませんよ」




嘘つき。
うそつき。


自分の、大嘘吐き。





「はぁ…」

約束してたのに、だとか
せっかく作ったのに、なんて気持ちはあったけれど、何だか言うのも悔しいから無表情で返してみせた。

こういう時、「紳士」の仮面を持っていると大変助かる。


『明日、一緒に昼食べよ』彼は確かに昨日言った。

いつもそう。

彼の事が好きな私は、彼の一言や行動にいちいち一喜一憂して、そして裏切られる。


ああ、悔しい。


いつも私ばかりが彼を好きで、彼は誰を見るでもなく私を裏切る。


いっそのこと、突き落としてくれればいいのに。
彼はそれすらもしてくれない。


(少し、食べ過ぎてしまいましたね…)

昼休みに食べた二人分のお弁当はもう空で、胃に重く留まる食物や、カラカラとなる弁当箱は更に惨めさを増大させた。

自分は中学生男子と言えど、元々そんなに食べる方でないのに無理をして食べてしまった。

初めて人のために作ったお弁当は、悲しくも彼の口に運ばれることはなかった。

我ながら、女々しいと思う。


私はそっと、ため息を一つ吐いた。



それと、彼はとことん私をどん底に落とすのが得意らしい。

見てしまった。

彼が可愛らしい女性(それも4〜5人)と仲睦まじくいる姿を。

嗚呼、ほんの好奇心でした。


ちら、と本当に一瞬だけ、彼を伺い見ました。


彼もこちらを見ていたらしく、目があってしまいました。


しかし私は至極冷静な態度で踵を返しました。

眼鏡の奥の自分の瞳は、きっと冷たいものであったと思います。


「痛い、」


わからない。

どこが痛いのかも。


可哀想なお弁当を詰め込んだ胃が?

ありきたりに、心が?



わからない。



わからないけれど、何だか息苦しい。





誰か。

誰か私を








私の息をこのまま止めて。




-終-



柳生独り語り。

溺れたら、最期。

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