切ない痺れ12



言っていいのか、分からなくて聞いてみた。
好きだ、と心から伝えたいから。
だから、気持ちを伝えさせて欲しい。

「良い?ねぇ…!」
「ええ、構いませんよ」

胸がいっぱいになる。
早く、たくさんの好きを伝えたくてたまらないのに。
なのに嗚咽のせいでまったく言葉が紡げない。
もどかしくてたまらなくて、とにかく俺は古泉の手をぎゅうっと握りしめた。
すると古泉は優しく微笑んで俺の手を握り返すと、俺が喋り出すまで待ってくれる。
やっぱりこいつは、すごく優しい奴なんだ。
胸が暖かくなった。

「こ、いずみ…」
「…はい」
「──ッ、す、き…!」

そう、たった二文字を口にしただけで涙がぼろぼろっと溢れ出す。
後はなんだかよく分からんが、とにかく俺は今までたまっていた気持ちを思い切り吐きだした。
何度も何度も好きだと繰り返して。
そうすると古泉はふんわりと俺を抱きしめてくれる。
鼻先を大好きな香りが掠めた。

「僕もあなたが好きです…愛しています」

ああ、なんて幸せなんだろう。

俺は古泉に抱きしめられたまま、遠くに始業のチャイムの音を聞いていた。











結局、泣きはらした目のままじゃ教室なんて戻れなくて、俺たちは午後の授業をサボって屋上にいた。
別に何か話すわけでもなく、ただ黙って肩を寄せあって。
沈黙ではあったが、その空気はとても心地よくて俺は安心して目を閉じていた。

早退して早く帰ろうとも思ったが、俺と古泉が二人して早退なんかしたらハルヒが五月蠅そうだったから、部活にも渋々出る。

そうこうしているうちにあっと言う間に下校時刻になり、俺たちは坂道を下っていた。
と、古泉がいきなり携帯をとりだしてぽちぽちと弄くり出す。
珍しいなと思っていると、俺のポケットの中で携帯が震えた。
見てみると着信は古泉で。
何かあるなら直接言えばいいのにと思いながらその文面を見て俺は顔を赤く染めあげた。




■本文

>>帰り、僕の家に寄っていきませんか?





胸が高まる。
どうしよう、返事なんて最初から決まっているのに。
真っ赤になって携帯の液晶を見つめている俺を古泉はにっこり笑って見つめた。
俺は恥ずかしくてたまらなくて、ただ一言だけ本文に入力する。






■本文

>>うん






送信ボタンをドキドキしながら押した。
すぐに古泉の携帯がバイブ音をたてる。
ああ今すぐこの坂道を駆け降りて、この場から消えてしまいたい!
ちらりと古泉を見ると、本当にうれしそうに笑って俺を見つめてくる。
そんな笑顔を見ると、恥ずかしくてたまらなくて俺は目を逸らした。
しかし、古泉はまたなにやら携帯に打ち込んでいる。
まだ何かあるのか。
もうそれだけで十分だろう!

程なくしてまた携帯が震え出す。
古泉をちらりと見ながら、俺は携帯を開いた。




■本文

>>いつもの別れ道の一本先の路地で待っていて下さい。
迎えに行きます。





なるほど、ハルヒ達に対するカモフラージュか。
俺は返信はせずに古泉と目を合わせると、こくりと頷いてみせた。







続く


あきゅろす。
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