秋、寒し




10月に入って徐々に寒くなってきている。
冬の支度を始めた木々を見上げながら俺は部室棟に向かっていた。
SOS団は年中無休だからな、やれやれ。

文芸部室の扉をとりあえずノックして入室した。
今日はすでに俺以外のメンツは集合していて。
まあ当たり前だろう、俺は掃除当番だったのだから。

「キョン、寒いわ!何か暖かいものない?」
「あるわけがない」

俺だって欲しいのに。

「男子は良いわよね、ズボンだから」
「スカートの寒さを補うためのものをお前はもう穿いてるじゃないか」

俺は呆れたようにハルヒと足下を指さしてやる。
彼女の足を覆っているものが白いソックスからタイツに変わっていたのだ。
それがあれば十分だ、我慢しろ。
俺はため息をつきながら鞄をおろし、パイプ椅子に腰掛けた。
前では超能力野郎がにこにこ笑っている。

「ところであなた、これ知りませんか?」
「…なんだそれ?」

古泉が取り出したのは黒い紙袋。
店の名前がゴールドラメで印刷されている。
どこのギャルショップの袋だ。
俺は何がでてくるのかと、目を細めて見つめた。
しかし、出てきたものはとても見慣れているもので。

「…女子の制服じゃないか」
「ええ、今日は僕が一番乗りだったのですが部室のドアノブに引っかかってまして」

他の方には聞いたのですが、みなさん心当たりがないようで、と古泉は女子三人の顔を見ながら困ったように笑った。
女子共が知らないものを俺が知っているはずないだろうと返してやると、古泉は少しだけ肩をすくめて制服を広げ始める。
よく見てみれば、少しサイズが大きめだ。
それを俺に見せつけながら古泉は小声で呟いた。

「ちょうどあなたにぴったりなサイズだったので」
「──っ!馬鹿か!」

俺が少し大きめな声で叫んでやると、ハルヒが早速反応しやがる。

「何そこ!面白い話?」
「いや、違う。断じて面白くない!」

そう返してやるとハルヒは唇をつきだして俺を睨む。
睨むな、普通にしてる方が可愛いぞ。
ハルヒはがたんと立ち上がり、

「みくるちゃん、買い出し行くわよ、有希も!」

と不機嫌に言い放つと、俺と古泉を部室の外に追い出した。
何だって言うんだ、俺はため息をついて隣の男を見上げる。
すると古泉はにこやかに微笑んで。

「彼女は別に不機嫌にはなっていません、買い出しに行きたい気分になっただけです」
「そうか、そりゃお前にとっちゃ有り難かろうな」

閉鎖空間にバイトに行くことにもならないだろうしな。
だったらお前も楽だろうと話すと奴は笑って助かります、と言った。
しばらくして女三人衆が荷物を持って出てくる。

「古泉君、鍵お願いね」
「承知いたしました」

にっこりスマイルで返すと、ハルヒは満足したように笑って文芸部室を後にした。
実質これで今日は解散になったのだろう。
俺はハルヒたちを見送る古泉に背を向けて部室内に入ると、荷物を手にした。
折角早く帰れるなら、今日は帰ろうじゃないか。
すると古泉は出口をふさぐように立ちはだかった。

「何だ、折角なんだから帰るぜ」
「ちょっと待って下さい」

古泉は後ろ手でカチリと鍵を閉めやがった。
おいおいおい、魂胆が丸見えだぜ。
残念ながら俺はこんな場所で事には及びたくはないのだが。
心底嫌そうな顔をすれば、古泉は嬉しそうに笑ってなぜか女子の制服を手に取った。

「折角だから着てみませんか?」
「…お前、自分が何を言っているのか分かっているのか」
「分かっていますよ」






続く


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