蓄積される感情1


※社会人倦怠期古キョン







俺は夕闇に包まれた、肌寒い街角で鞄片手に突っ立っていた。
もちろん、恋人を待つためにである。

最近、古泉は忙しい。
勤めたのが製薬会社ということもあって、フツーの新聞社に勤めた俺とはえらい違う。
いや、俺が忙しくないわけではない。
古泉が忙しすぎるだけだ。

俺はそれでも久しぶりに古泉と夕食を食べにいけることを楽しみにしていた。
右ポケットに突っ込んである携帯を取り出すと、ぱかっとあけて時間を確認する。
待ち合わせまではあと15分だ。
ドキドキする心臓を押さえていたら、いきなり携帯電話が鳴った。
画面を見ると、古泉一樹の文字が。
嫌な予感がする。

「…もしもし」
『あ、キョン君ですか?』

少しあせったような古泉の声が耳に入ってきた。
後ろのほうがなにやらガヤガヤと騒がしい。

『申し訳ありません、接待が入りまして…今夜ご一緒できな』
「分かった、仕事だから仕方がない、また誘え」

古泉の話を最後まで聞くことなく、俺は早口でまくし立てると電話を切った。
はっきり言おう、俺は最高にむかついている。
あんなに会えると期待して、胸を膨らませていた俺が馬鹿みたいだ。
しかも、俺だけが古泉に会いたい会いたいと思っているような状況も気に食わない。
最悪だ、と俺は自宅とは別の方向に歩き出していた。






「うぇー…目が回る…」

俺はふらふらと古泉のマンションの前に来ていた。
なぜここに居るのかなんて分からない、気づけばいたんだ、悪いか。
とにかく、酔いが回って気持ち悪い。
ポケットからキーケースを取り出すと、俺は自分の自宅であるかのように古泉の家に上がりこんだ。
リビングの床に鞄を投げ捨て、ソファに倒れこむ。
高校生だったころのように、ネクタイを緩めてボタンを外し、ついでに背広も脱ぎ捨てた。

「おーい古泉―!」

と、呼んでみるがいるはずもない、彼は現在接待中だ。
俺ははぁ、とため息をついてクッションに抱きつく。
胸いっぱいに空気を吸い込むと、そこからはかすかに古泉のにおいがした。
それに、なぜだか胸が締め付けられる。

こんなに会いたくて仕方がなかったのに。
夕食を食べて、適当にいろんな話をして、それからベロベロに酔ったフリをしてからここにあがりこむ予定だった。
そしてあわよくば、そのまま抱いて欲しいとまで思っていたのだ。
もちろん今日のメインは夕食ではなくて、最終段階のそれを俺は期待していたわけで。
この俺がここまで古泉が欲しくてたまらないと思っているときに奴は都合が悪いだなんて、まったく残念だな、あぁ残念だな!
俺はこの良く分からない気持ちを紛らわす方法はなかろうかと思いをめぐらせた。
しかし、何も思いつかず、もう寝てしまおうと思い、場所を寝室に移したのである。






俺はシャワーも浴びる気にも、着替える気にもなれずにベッドに倒れこんだ。
そして目を瞑って睡魔に飲まれようとまどろみに身を任せていた。
しかしふと、今日もし会えていたらここで抱かれていたのかな、と思う。
それからはもうだめだった、寝られるわけがない。
気持ちが妙に高揚して来て、俺はきゅ、とズボンの前を押さえ込んだ。

「ハッ――あぅ!」

信じたくはないのだが、ソコはすでに興奮して少し大きくなっている。
恋人の居ない部屋で、しかもベッドの上で自慰に耽るだなんて、なんてはしたないのだろう。
それでも俺は止まらなくて、カチャカチャとベルトを外すとスラックスの前をくつろげた。
初めは下着の上から先端をなぞりながら、緩い快楽に浸る。
するとだんだんと下着がいやらしい液体で湿ってきた、直接触りたい。
ドキドキしながら俺はするりとそれを脱ぎ捨てると、きゅっとペニスを握りこんだ。

「あっ!あぅ、あ、ん…!」

びりびりと激しい快楽が背骨をかけ抜けて、俺は夢中で上下に手を動かす。
頭の中は、2週間前に抱かれたときの映像が流れているわけで。
あの古泉のニヤニヤな余裕顔が珍しく欲情に濡れていやらしかったとか。
耳元に吹きかかる古泉の吐息に異常なほど興奮してしまったとか。
とにかく、あの日のお互い貪りあうようなセックスを思い出す。
あの時は古泉に必要とされている、愛されていると思い知らされたのに。
なのに今日はそれを感じない、古泉が居ない。

「あ、も…イク――――…ッ!」

俺は唇を噛み締めて果てた。
頭がふわふわとしてよく分からない感覚に支配される。
そのまま、するりと手をアナルへ滑らせて更なる快楽に溺れてしまおうとソコへ指を一本挿入した。
すぐにアナルは指一本なんて容易に飲み込んでしまった、こんな体になってしまったのは古泉のせいに違いない。
入るぎりぎりまで指を押し込むと、俺はゆっくりと指を動かし始める。
内壁はどこもかしこも性感帯で、ペニスへの刺激とはまた違う快楽に俺は酔っていた。

もっと、もっと欲しい。

頭の中が完全に開花しちまった俺は、一気に指を増やして3本をねじ込んだ。
それがすんなりと入ってしまうだなんて、恥ずかしくて顔から火が出そうである。
しかし、今は一人。
こんないやらしい俺を知っているのは俺だけだ。

「あ、あ…気持ち、イイ…!」

きゅうっとアナルがしまって、もっと奥へと誘い込むように蠢いた。
俺はいつもこんなはしたない尻で古泉を受け入れているのかと思ったら、死んでしまいたくなる。
とにかく気持ちいいところを探して俺は中をかき回した。
そしてすぐに俺のイイトコロを発見する。

「アッ!こい、ずみ…古泉…!」

ぐちゅぐちゅとソコばかりを抉り、反対の手でペニスを乱暴に擦りあげると俺はあっけなく達してしまった。
ぼんやりと霞ががった頭で快楽の余韻に浸る。
未だ後ろには指を突っ込んだまま、ひくつくソコを感じながら。
いつもなら、この感触は古泉が味わっているものなのに。
そう思うと俺は一気に虚しく、悲しい気持ちになった。

そうか、俺はむかついていただけじゃない
寂しくて仕方がなかったんだ、と思って無性に情けない気持ちになった。





続く


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