あまいキスはお好き?


エドは小さな箱を抱えて執務室に向かっていた。
今日はバレンタインデー。
ずっと前からロイがしつこくチョコが欲しいと言っていたから仕方なく持ってきてやったのだ。
しかも珍しく手作りで。

“ロイが欲しいって言ったから持ってきてやったんだ・・・”

などと自分に言い聞かす。
大きな執務室のドアの前でエドは大きく深呼吸をすると勢いよくドアを開けた。

「!!!!????」

いつもなら書類が山積みの机の上は今日に限っては可愛らしいラッピングのチョコの山。山。山。
箱の間から青年ーーーロイが顔を覗かす。

「や、やあ、鋼の。ちょっと待ってくれ!!」

そう言ってロイはわたわたとあわてる。
こんなににあるチョコの言い訳でもしようとしたのだろうか。
立ち上がった途端。

ザーーーーーーー・・・

立ち上がった拍子にチョコの雪崩が起きる。
そんなロイを見てエドは怒る気が失せてしまい
クスクスと笑った。
床に落ちたチョコをとりあえず大きな袋に片づける。

「・・・・・怒っていないのかね?」
「ん〜、怒ろうかと思ったけどさ。
 そんな、女の人からチョコをもらうの、断れないよな〜って思って」
「で、君はくれないのかね?」

いきなり言われてエドの顔が赤くなる。
ポケットの中に手を入れて小さな箱を取り出す。
嬉しそうにロイはほほえんだ。

「あ、有り難く頂けよ!なんせ手作りだからな!」
「開けていいかね?」

エドの返事も聞かずにロイは箱を開ける。
中には可愛らしいハート型のチョコ。
一つチョコを取り出すと口に入れる。

「とても甘くて美味しいよ」

そう言ってエドの顎を持ち上げ口づける。
甘いチョコの味がエドの口内に広がる。
唇を離すとロイはエドの髪を撫でながら言った。

「私が口にするチョコはエドのだけだよ」


結局雪崩を起こしたチョコ達は彼の部下達にこっそり配布されたのはヒミツである。




end


あきゅろす。
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