一緒に、いたい
「俺は帰らんぞ」
顔色はあまり変わっていないのに、酔っておかしくなってしまった彼に僕は頭を抱えた。
「キョン君、もうお店閉まりますから出ましょう、ね?」
「でたらどこに行くんだ、どこださぁ言え!!!」
僕の胸元を引っつかんでがくがくと揺さぶってくる。
高校を卒業してからあまり会う機会はないが、僕と彼はたまにこうやって飲みに出かける仲になっていた。
しかし、こんなに飲んで飲んで飲みまくって変になってしまったキョン君は初めて。
どうしたものやらと思いつつ、次に行く場所を考える。
あまり夜遊びの部類に縁がない僕はカラオケとか、深夜でもやってる居酒屋とか、そんなのしか浮かんでこない。
ちらりと彼を見て、カラオケに行くようなキャラでもないし、これからさらに居酒屋で飲ませるのも危険だと思って、僕の頭の中には"帰宅"の二文字しか浮かばなくなっていた。
「キョン君、もう遅いですから帰りましょう」
「い・や・だ!!!!」
断固として帰る気のない彼に僕は途方にくれてしまう、さあどうしようか。
「貴方はどこか、行きたいところはありますか?」
と、逆に聞いてみた。
すると彼は少しだけ考えて。
そして一言。
「お前んち、とか…」
と小さくつぶやいた。
僕はポカンとして、彼を見つめる。
酔っているからか、いきなり赤面して言い訳なんかは始めない。
それどころか、最後の一撃とばかりにこう、言い放った。
「今日くらいはお前と一緒にいたいんだ」
本当はあの頃のように毎日、一緒にいたい
end
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