切ない痺れ3


別段何か思った訳じゃない。
ただ、勝手に体が動いただけだ。






カッとした俺は古泉の手を無理矢理引っ張ると、トイレの個室に引きずりこんだ。
何が起こったのかと目を白黒させる古泉を突き飛ばし、便座に座らせる。
そして自分のネクタイをしゅるりと取ると、古泉の手を縛り上げた。
驚いた古泉は何かを言おうと口を開くが、聞くのが怖いから口を塞ぐ。
いつもより険しい顔をして俺を見ている古泉に、さらに心臓が絞めあげられる、痛い。

痛い、痛い───…

そんな、蔑んだよう目で見ないでくれ。

また、涙が出そうになった。
でもそんな所見られなくない、俺を見るな。

古泉がいつもきっちり上までしめているネクタイに指をかけた。
しゅるりと良い音を立ててネクタイが外れる、そしてそれで古泉の視界を覆う。
口元の手は外した、言葉より古泉の視線の方が辛い。

「ちょっと…!どうしたんですか!」

もちろん聞こえない、耳の穴に蓋をすることにしたからだ。
俺は身動きが取れなくなった古泉の上に乗り上げる。
視界をふさがれ、手も縛られた古泉の姿を見て俺は不謹慎ながらも欲情していた。
第一ボタンまでとめられたシャツのボタンを四つほど外して。
それからゆっくりとシャツの間から手を差し入れて古泉の胸板をなぞる。
そこには程良く筋肉がついた、しなやかな体があった。
ゆっくりとなぞりながら、たどり着いたのはもちろん下肢。
さすがにこれには驚いた古泉が何かを叫んでいるが、聞こえない。
ベルトをゆるめて、ジッパーを下ろし、下着の中から古泉自身を取り出した。
もちろん、通常サイズのモノだが。
俺は古泉の前にひざまづくと、躊躇うことなくそれを銜え込んだ。
古泉が息を飲む、チロチロと先端を抉るように舐めてやるとそれは段々と大きくなった。
それは全部を口に入れるのが困難なほど大きい。
見ると非常にグロテスクなモノではあったが、古泉のモノだと思うと愛おしくて、俺は必死にペニスを銜える。

「んふ、ん、ぅん、ンン──!」
「や、めて下さい…!」

無視だ、こんなの無視。
俺はちゅ、と古泉のペニスに口づけをしてから一度そこから口をはなす。
若干古泉が安心したような顔をしたが、安心なんかさせてやるものか。

俺は自らもズボンと下着を脱ぎ捨て、再び古泉の上に乗り上げた。
ぎしり、と便座が二人分の体重を支えられないと鳴く。

「キョン君、離して下さい!」
「………」

もちろん、聞こえな以下略なので返事もしない。
ただ、黙々と自らの後ろの穴に先走りを塗り付けた。
男同士でするときはこうだ、と聞いたことがあったから。
俺は入り口を濡らして、十分な潤いと前戯がないまま古泉のペニスをアナルに押しつけた。
そして一気に腰を落とす。

「イッ、ああぁあ!」
「きつっ…!」

何かイヤな感触がして、アナルが濡れた。
あぁ、絶対に切れたな、と思うが今更止められない。
激痛に耐えながらも、それでも古泉と繋がることができた喜びで胸がいっぱいになって夢中で腰を振る。
(もちろん俺は痛いばっかりだ、でも古泉が気持ちいいならそれでいい)

「あぐっ、ヒッ、ううぅ…!」
「やめて下さい!」

聞こえない。
俺を感じて、少しでも良いから。

「貴方が痛いだけだ!やめ…ぅっ!」

ほら、俺の中で果ててよ。
全く持って意味はないけどな。
非生産的な無意味なセックス。
あぁ、馬鹿馬鹿しい。



「いい加減にしろと言ってるじゃないか!」



不意に、いつもの敬語でない古泉の声が耳の蓋を突き破って聞こえた。
一気に現実に引き戻された俺ははっとして動きを止める。
それと同時に古泉が俺の中で果てた、暖かい、愛おしい液体が俺の中を満たす。

「あ、あぁ…!」
「うっ、く…!」

脱力した俺は古泉の胸に手をついて体を支えた。
行為が終わったせいか、頭がだんだんと冴えてきて俺は絶望的な気分になる。
とにかく今はこの状況から逃げ出さなければ。
俺は古泉をずるりと抜くと、手早くトイレットペーパーでそこを拭う。
そして、古泉のペニスを中にしまってジッパーをあげ、ベルトをしめてありのままの姿に戻した。
自分の後処理なんてしている暇はない。
慌てて下着とズボンを引き上げると、トイレから逃げだそうと鍵を開けた。
しかし、古泉を縛ったままだったことを思い出して少しだけ拘束をゆるめると、トイレを飛び出す。
古泉が俺を追いかけようと必死に何か叫んで、がたがたと拘束を解こうと手を乱暴にゆする音が聞こえたが捕まりたくなくて。
腰とか、アソコとか、体の節々が痛むが関係ない。
真っ先に無人の一年五組から自分の鞄を掴むと、俺は学校を飛び出した。






体よりも、心が悲鳴をあげていた。





続く


あきゅろす。
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