ローテローゼ3


ぐっ、と喉に何かが迫るような気持ち悪さに襲われて、俺はがばっと起きあがった。
…つもりだったのだが、生憎体は動かない、なぜだ。
気持ち悪さを抑えながら、俺は重い頭を上げて違和感を感じた腕を見上げた。
何なんだ、さっき折角ほどいてもらったばかりの腕はまたしっかりと戒められている。
しかもベッドの端にしっかり固定されている、これじゃ逃げ道がないじゃないか。
なぁ、古泉よ、どういうつもりなんだ。

「貴方が余りにも無防備で酷い人なので」

こんなに可愛くて、それを自分で理解していないだなんて最悪です、とよく分からないことを言う。
黙れ、俺がどう思おうが、どうなろーが俺の自由だほっといてくれ!

「ふざけるな、俺は俺のもんだ、お前のもんじゃないんだよ!」

そう叫ぶと、古泉の瞳が凍り付いた。
背筋に冷たい何かが走る、何だ、俺は地雷を踏んだのか?
しかし、何一つ間違ったことは言っていない、そうだろう?
そう言いたいのに、いつもの俺なら構わずにそう言い放っているはずなのに。
なのに、古泉の冷たい視線に突き刺されて俺の喉は凍ってしまったかのように言葉を発することができなくなってしまった。
それどころか、体が小刻みに震えてきてしまい、自分が信じられない。

「酷いのはあまり好きではないのですが、貴方は酷い方がお好きなようですね」
「はっ、なに言って…んぐ!?」

大きな手のひらが俺の口を押さえつけてきて、言葉を発することができなくなる。
そのままにやりと奴は笑うと、俺の一張羅である下着をおもむろに引きずりおろした。
サーッと血の引く音がする、俺はすぐに悟った。

男に犯される、レイプされる、と───

冗談じゃない、ふざけるなと言う思いから、何でもいいから助けてくれという思いに変わる。
怖くて、逃げ出したくてたまらないが、恐怖で緊張した体は小刻みに震えるのみで全く言うことを聞いてくれない。
そうこうしているうちに古泉がペニスを掴み、上下に扱き始めた。
感じたくなんかないのに、悲しい男の性からか少しずつ俺のモノは勃ち上がり始める。
そんな自分が情けなくてたまらなくて、涙が滲んだ。

「もう濡れてきましたよ、気持ちがいいんでしょう?」
「ふ、うぅ〜!」

そんな訳あるか、と弱々しく首を振ると古泉は少し困ったような顔をする。
少し考えた後に何か思いついたのか、ベッドから少し離れたところにあるタンスに向かった。
それから何かをゴソゴソ探している、嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
しばらくして箱を二つ取り出すと、それを持ってまた俺の上に馬乗りになる。

「無理矢理ねじ伏せて痛がる顔も可愛いとは思いますが、」

箱のふたを開けながら、古泉は楽しそうに微笑んで。

「快楽の底につき落として、よがり狂わせる方が楽しそうです」

一つ目の箱から出てきたピンク色の物体に頭が真っ白になる。
待て、それは所謂大人の玩具ってやつだよな!?
そんなもんどうするつもりだ、まさか、まさか!
混乱する俺はただ、震えながら古泉のすることを目で追うことしかできない。
追っていった視線の先で古泉が俺のペニスにローターを巻き付けようとしているのが目に入った。
とにかくやめて欲しくて俺は半狂乱になって叫ぶ。

「やめろ、やめてくれ!何でも言うこと聞くから、あ、ああぁ!?」

俺の言葉を遮るように古泉はペニスに巻き付けたローターが先端に当たるように固定すると、かちっとスイッチをおした。
嫌な振動音をたててローターが振動し始め、初めて感じるよく分からない感覚に声があがる。
だんだんとそれは快楽に変わり、口からは気持ちの悪い声があふれ始めた。
それだけは聞かれまいと思いっきり唇を噛みしめる。
すると古泉の指が俺の唇をなぞり、そして無理矢理に口の中に指を進入してきたのだ。

「んむ、んんー!ふぁっ!」
「我慢せずにいやらしい声、聞かせて下さいよ」
「やだっ、あっ、アアァア!」

ブルブルと振動がペニスを刺激して、慣れない快感に俺はすでに限界で。
足先にぐぐっ、と力が入り、シーツに食い込む。
焦点が合わず、見上げる天井が霞んで見え始めた。

(もう、イきそうだ───)

頭の隅でそう思ったとたん、ローターの振動が急に強められて俺は悲鳴を上げた。

「ヒイッ!?ア、アアァア───!」

生ぬるい液体が腹を濡らす感触を覚えながら、呆然と天井を見上げる。
しかし、射精後の余韻に浸る暇もなく、ローターが俺を攻め立てた。
立て続けの快楽に息を整えることさえできない。
苦しくて胸がひゅーひゅーと聞いたこともない音を立てていて、俺は怖くなった。

「やめ、ろ!ふざけるな、ア!」
「大丈夫、怖くなんかありませんよ、それすらも分からなくさせて差し上げます」

おい、その台詞が一番怖いんだが!
俺をどーしようってんだ、クソ!
殴ってやりたくて、でも手は動かないからと俺は足で思いっきり古泉を蹴りあげた。






続く


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