切ない痺れ2



※●←キョン続き










個室に逃げ込んでから20分位して、ようやく涙と嗚咽が止まった俺は授業に行くべきか悩んでいた。
きっと目は真っ赤に腫れていて、泣きはらした後だなんて一目見ただけで分かってしまうような顔だ。
谷口、国木田はおろか、ハルヒや他のクラスメイトにまでこんな顔見せられるか!
特にハルヒだなんて、どーしたんだ、なんなんだとしつこく、しつこく聞いてくるに違いない。
そんな面倒くさいことになってたまるかと、俺は授業をさぼって保健室にでも行こうかと考えていた。
保健室に行けばサボりではく、体調不良になるもんな。

そんなことを考えながら個室の扉を開ける。


「─────え?」


そこには、いるはずのない男が心配そうに立っていた。
俺は信じられなくて、思わず一歩後ずさりする。

「な、なんで…」
「あなたが気持ち悪そうにトイレに駆け込むのが見えたんです」

あぁ、あの時か、谷口と国木田がでかい声で俺のこと呼ぶから古泉も気がついたんだ。
しかし、何故こんなところにいるんだ、授業はどうしたんだ。

「今は自習なんです。それで、実験室には僕のクラスの前通らないと行けないでしょう?だから心配で廊下を見ていたんですけど、あなたが通る気配が全くなくて…」

だから見に来たんです、とコイツは爽やかに笑いやがった。
笑うな、こっちが泣きたくなるだろう!
唇を噛みしめて古泉を睨み上げると、俺は適当な言い訳をした。

「ちょっと気持ち悪くなって吐いただけだ!落ち着くまでいただけだから、大丈夫」
「な──っ!涙がでるくらい苦しかったんですか?」

そこに触れるなそこに!
一番触れて欲しくない所なんだよそこは!
しかし、そんなこと知らない古泉は突然俺の額に手を当ててきた。
突然のことにドキッとする、俺の額より少し冷たい手のひらが心地よい。
しかし、それはすぐに離されて古泉の額に行ってしまった。
もっと触って欲しかったのに、なんて思ってしまったことに顔に熱が集まる。

「キョン君、ちょっと顔を上げて下さい」
「───え?」

くいっ、と上に向かされたかと思うと古泉の顔が近づいてきた。
びっくりしてとっさに目をつむる。

──コツン

もしや、と思って目を開けるとそこにはドアップな古泉の顔があった。
あ、やっぱり睫がすごく長くて格好いい、だなんて再確認してる場合か。
俺はなんだか恋人同士のような甘い雰囲気が嬉しくて、悲しくて、苦しくて思ってもみないことを口にしてしまったのである。

「なぁ、古泉…さっきの女の子、付き合ってるのか?」
「え、」

びっくりしたように古泉は閉じていた目を開ける。
俺は逃がさないとばかりにその目を見つめ返せば、古泉は笑って「そんな関係ではないですよ」と言った。
その言葉を聞いても、俺は安心できるはずもない。
確固たる証拠がないし、古泉があの女の子を見つめ返す眼差しが甘く感じたからだ。
騙されるものか、と思うとまた胸が痛む、バカか、古泉を信じればこの痛みともオサラバできるのに。

「嘘だ、だってあんなに優しく見つめてたくせして!」
「彼女は機関の人間です、先日負傷したばかりだったのでそれが心配だったのです」

これで納得できますか?と古泉は笑いながら額を離す。
それを聞いてやっと目が醒めた俺は、自分の勘違いと嫉妬深さに赤面した。

「ご、めん…」

しかし、謝ってから気づく。
いくらなんでもこれだったら古泉に対する気持ちがバレてしまったのではないか?
あんなに必死になって付き合ってるか付き合ってないかを問いただしてしまったなんて、バカみたいだ。
どうにか弁明しなければ、と俺が口を開く前に古泉が言葉を発した。


「あなたは本当に彼女のことが好きなのですね」


一瞬、目の前が真っ暗になった。







続く


あきゅろす。
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