暑い、熱い夏
暑い、熱い。
夏の部室は暑いし、古泉に好き勝手された体も熱い。
いい加減にしろ、と思う俺に追い打ちをかけるかのように蝉の鳴き声が五月蠅いのだ。
なんだか悔しくて俺の体を突き上げている古泉の背中に爪を立てた。
古泉の顔が少しだけ歪むが、それはすぐにいつもの笑みに戻る。
「やってくれましたね?」
「ッは、こんなクソ暑いところで発情しやがるからだ」
ざまぁみろ、と思ったのも束の間。
俺の体を抱き込むようにして抱いていた体が離れる。
はっ、としたときには俺の足は古泉によって思いっきり開かされていた後だった。
そうされると恥ずかしい部分が全部丸見えで、俺は慌てて足を閉じようと試みる。
しかし、古泉のバカ力によって押さえつけられた足はびくともしなくて。
羞恥から顔はさらに真っ赤になっているはずだ、古泉が俺の顔を見てニヤニヤ笑っている。
唇を噛んで涙目で睨み上げるとぐんっ、と中の古泉が大きくなった。
な、ちょっと待て!
「無意識に誘っているんですか、可愛いですね」
「ふざけるなっ、アッ!?」
突然開始された律動に思わず甲高い喘ぎ声が飛び出す。
さっきのような緩い突き上げではなく、激しく深く。
ずるりとぎりぎりまで引き抜かれた後、奥まで一気にペニスを押し込まれて体が震えた。
やばい、さっきより気持ちいい。
しかも出し入れする所も、その刺激に震える俺自身も視界に入ってしまい不本意にも俺は興奮していた。
「あ、ぅあ!激し、ダメだ、アァア…!」
「さっきよりもきついですよ、全く素直な体ですね」
「うるさい!ヒッ!あ、あぁあ!」
俺が生意気な口をきいて少しばかりの抵抗をしようとしても、結局優位なのは古泉なわけで、一番感じる所を抉られて俺はすぐにノックアウトされた。
悔しいのと、気持ちがいいのとで訳も分からず涙が頬を伝っていく。
もう好きにしてくれ、と思ってしまったのはきっとこの暑さのせいに違いない。
「う、うぅ…きもち、い…溶ける…!」
結合部が熱くて、ドロドロに溶けてしまいそうだ。
きっと今の俺の顔は気持ちよすぎて俗に言うアヘ顔になってるな、恥ずかしい。
顔は真っ赤だし、目だってトロンとして涙でてるし、開けっ放しの口の端からは唾液が…ってどんだけだ!
ダメだ、みるな!
古泉の肩を掴んでいた手を離し、自分の顔の前で交差して恥ずかしい顔を覆い隠してみた。
するとすぐに古泉が「隠さないで下さい」だなんて言ってやがる。
絶対に見せるものか、それにお前の手は俺の足を押さえつけてるから離すことなんか出来ないだろざまあみろ!
…なーんて思っていた俺はバカだ、最低だ。
なんと古泉は俺の足を押さえつけていた手を離して、顔を隠していた俺の腕を後ろの壁に押さえつけやがったのである。
そして何よりショックだったのが、押さえつけられていた足は咄嗟に閉じられることなく、はしたなく広げられたままだったのだ。
あんなに恥ずかしくて閉じてしまいたいと思っていたのに、広げた方が気持ちいいと認識してしまった俺の体は意志と反して自らの快楽を選んだのだ。
みっともなくて、恥ずかしくて嗚咽が漏れた。
「う、ひっく…バカ泉…!」
本格的に泣き出した俺に苦笑して、古泉は優しく溢れた涙を舐めとってくれた。
そして瞼、頬を順に軽く口づけると最後に唇を深く合わせてくれる。
(こうすると俺が泣きやむことを古泉は知っているからだ)
次第にその口づけは深く、激しくなり、くちゅくちゅと濡れた音が五月蠅い蝉の鳴き声に負けず劣らず部室に響く。
嗚咽が収まり、キスに夢中になっていると突然古泉が律動を再開した。
「ンゥッ!?ふあっ、あ、アァ───ッ!」
「ごめんなさい、もう我慢できま、せん」
そう言って先ほどよりも、もっと、もっと激しく突き上げられる。
的確に前立腺を擦り上げられて、じわりとペニスの先端から透明な液体がにじみ出た。
そろそろ限界だ、しかも後ろからの刺激だけで。
しかし、もうそんな恥ずかしいこともどうでもいいくらい俺の頭は暑さでおかしくなっていた。
ガクガクと揺さぶられて汗と涙が混じったような液体が飛び散る。
顎のラインは飲み下せなかった唾液がトロトロと流れてぼとり、とワイシャツの上に落ちた。
「こ、いずみ…!ダメ、も、イク…!」
「はい、僕もそろ、そろ限界、ですね」
いつもよりかは余裕のない顔がにこりと微笑む。
俺の腕を押さえつけていた手は離され、俺はすぐに古泉の首に腕を回して抱きついた。
古泉も同様に俺を抱きしめてくれる。
「はっ、も、ダメ!ア、ンアアァ───ッ!」
「はっ、うっ…!」
耐えきれずに俺は勢いよく熱を吐き出した。
同時にドクリ、と熱い飛沫がじんわりとおなかの中に広がる。
暑くて、熱くて鬱陶しいくらいだったのに。
何故かその飛沫の熱さだけがとても愛おしくてたまらない。
きっと夏の魔力が俺をおかしくしてしまったのだろう、全くどうしてくれるんだ。
嗚呼、蝉の鳴き声が五月蠅い。
end
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