天国から、愛する貴方へ7
イヴァンは腐っている俺を見兼ねて、敢えて怒鳴り散らしてくれたのだろう。コイツは本当に良い奴だ。
「そう、だよな……ジュリオは、俺を、待ってる……」
「ああ、絶対だ」
 イヴァンは力強く頷きながらそう言うと、まずは飯を食え、と言ってどこからか紙袋を取り出すと、ホットドッグを俺に差し出した。
 病み上がりの俺にこんなものを渡しちゃう辺り、イヴァンらしい。ちょっと食べれるか自信ねぇな、と言うと、根性で食べきれ、と返された。根性でどうにかなるもんじゃないんだけどな……
 渋々それを受け取った俺を見て満足そうに笑ったイヴァンは、もう一つ、と言ってミキサーを取り出した。おい、何か嫌な予感が……
「スペシャルドリンク、作ってやる。コレを飲んだら一発で元気になるぜ」
「それだけは遠慮シマス」
 久々にいつもの調子でイヴァンに返すと、奴はにんまり笑って無理にでも飲ませてやるね、と意気込んだ。
 そんな調子で、とりあえずホットドッグだけは完食できた。いつもは小さなパンを一口飲み込むだけで精一杯なのに。
 ありがとう、イヴァン、と口には出さずに胸の中で礼を言う。口に出して礼なんて言ってしまうと、きっとこいつ、調子に乗るからな。
 俺とイヴァンが昔のようにそんなの飲み物じゃねぇ!と言い合っていると、突き破られるんじゃないかって程の大きな音を立てて扉が開いた。
 びっくりした俺とイヴァンはそちらに注目する。そこには髪の毛を少し乱したベルナルドの姿があって、俺は眉を寄せる。
「どうした、ベルナ―――……」
「ジャン、こんなものが届いた。お前に見て欲しい」
 俺が全てを言い終わらぬうちに、ベルナルドは言葉を被せてきた。相手を言葉を遮ることなんてしないベルナルドなのに、一体どうしたのだろう。
 ……そういえば、ノックも忘れてたな、こいつ。
 俺はますます怪しいと思って口元を引き締める。何か、胸騒ぎがした。
「これだ……」
 そう言ってベルナルドが差し出したのは、一つの封筒。そこにあった筆跡に、俺は目を見開いた。
 咄嗟に手を伸ばし、封筒を毟り取るような勢いでベルナルドから奪う。そして、少し皴になってしまった手紙をもう一度、瞳に写した。
 そこには、ジャンさんへ、の一言。
 恐る恐る裏返した、リターンアドレスの欄には「ダ・パラディーゾ」の文字。
「天国、より……だって……?」
「まだ、開封はしていない……ジャン宛だったからな……悪いが、確認をしてもらっても良いかい……って、もう開けてるね」
 苦笑したベルナルドの言葉を聞き流して、俺は夢中になって封筒を開けた。この文字は、この筆跡は……!
「やっぱり……!」
 俺は叫んだ。腹の底から叫んだ。
「ジュリオからだ……!」
 目の前が涙で霞んだけれど、構わず手紙に視線を走らせる。何て書いてあるんだ、ジュリオ、ジュリオ―――!



続く


あきゅろす。
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