天国から、愛する貴方へ3
デイバンで一緒に行動を始めた俺とジュリオ。色々なことがあったけれど、ジュリオがあのボンドーネのジジイの呪縛から解き放たれた日……そして、アレッサンドロ親父を助け出したあの日。
 バクシーの放った手榴弾から、ジュリオが俺を守ってくれたあの日。それから……俺と、ジュリオが離れ離れになったあの日。
 俺はあの時、確かにジュリオが事切れた瞬間を見ていた。
「ジャンさんが……見えない……」
 そう言って俺の上に重く圧し掛かってきたジュリオの体を受け止めて、俺は叫んだ。深い絶望と、憎しみの叫び声。
 何度もジュリオの体を揺すぶった。起きてくれよって何度も声を掛けた。
 カミサマなんかにも祈って、頼むからこいつの尊い命だけは救ってやってくれって、俺は何度も叫んだんだ。
 だけど、ジュリオの体が再び動くことはなく、重たいまま。まだ体は温かかったけれど、首の傷からの出血は酷くて、どんどん体が冷たくなっていっているような気がした。
「ジュリオ……ジュリオ―――……」
 先ほど散々リンチされた俺の体も、精神も限界で、段々意識が遠のいていく。だめだ、早くジュリオの体を抱き上げて、医者に連れて行かないと……
 しかし、俺の体はピクリとも動かなかった。ただ、ジュリオの体を抱きしめて、俺は意識を手放した。
 ゴルフ場での記憶は以上だ。しかし、俺が目を覚ましたとき、とんでもない事実が俺を待ち受けていた。
 デイバンホテルに運び込まれた俺は、ホテル内に作られた病室のベッドの上に寝かされていた。目が覚めたのは、イヴァンの部隊に救出されてから二日後の夜。
 ぼんやりと目を開けた俺の視界に飛び込んできたのは、疲れの色が色濃く出ているベルナルドの顔だった。俺が目を開けた途端、大きな声で俺の名前を呼ぶ。
「ジャン……!良かった、目が覚めたか……」
「ベル……ナルド……?ここ、は……」
「デイバンホテルの病室だ。それよりジャン、すまない……!こんなことになったのは俺の責任だ……」
 苦しそうな顔をしたベルナルドはそう言って項垂れた。こんなことになる前に俺が機転を利かせていれば……と、彼は深く自責の念に駆られている。
 しかし、今の俺には……ベルナルドには悪いが、どうでもよかった。もっと、もっと気になることがあった。
 震える唇で、彼の名前を呼ぶ。
「なぁ、ベルナルド……アイツは……ジュリオは、どこだ……?」
 その言葉を聞いて、ベルナルドは肩を震わせた。その反応だけで、俺には分かってしまった。……いや、初めから分かっていた。
 彼は、もう、いない。
「ジュリオ………ッ!」
 小さな声で彼の名前を呼んだ俺に、ベルナルドは顔を横に向けた。やりきれない、と言うような表情で俺を見ない。
 そうだ、ジュリオは死んだんだ。俺を庇って、俺を守って、血を吐いて死んだ。俺が見た、最後のジュリオの姿が思い出される。



続く


あきゅろす。
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