死と隣合わせの快楽


『じゅ、十代目…今からお伺いしても良いですか?』


そんな電話が入ったから、俺は汚い部屋を小ぎれいにして獄寺君が来るのを待っていた。
電話の向こうでひどく焦ったように喋っていた彼が妙に気になる。

「どうしたのかなぁ…」

そう呟いた瞬間、ベルが鳴った。
あわてて俺は階段をかけおりてドアを開ける。

「いきなりすみません…!」

そこには息を切らした獄寺君がいた。
顔も少し赤みを帯びていて、ものすごく走ったのかな、と俺は思う。

「そんな、走ってくるなんてどんな用事───って!」
「すみません、失礼します!」

俺の話なんか聞かないで獄寺君はドカドカとうちに上がり込む。
そして俺の腕を痛いほどに掴んで二階に引きずりあげた。
部屋の扉を乱暴に開き、中に入ろうとする獄寺君に混乱して俺は抗議の声を上げる。

「獄寺君!どうしちゃったんだ、よ!──ッ!」

そんな俺をベッドに突き飛ばして、彼は俺の上に乗り上げた。
これはまずい、と警告が鳴る。
慌てて逃げようとしたが、腕をねじ上げられベッドに押しつけられてしまい、逃げる術を失った。
怖くて恐る恐る振り返ると、そこにあった獄寺君の顔は。

「───なんでそんなに苦しそうなんだよ!」
「すみません十代目、も、我慢できなくて…!」
「わっ、ちょっと…!アッ!」

ずりっ、とズボンを下着ごと引きずりおろされて俺は上擦った声を上げた。
それだけじゃない、獄寺君の手はするりと俺のペニスに伸ばされて、ゆるゆると刺激を始めたのだ。

「ヤッ、ア!ご、くでらくん…!いやぁ!」

性急に追いつめられて、乱暴に性器をしごかれる。
ヌルヌルと溢れだした先走りがすべりを手伝い、俺はあまりの刺激に限界を迎えようとしていた。

「獄寺君、もぅ、ダメェ…!」

ふるっ、と全身を震わせて精を吐き出そうとしたそのとき。

「まだダメっスよ…」

突然愛撫をやめ、代わりに獄寺君は自分の首にかけていたアクセサリーを俺の性器に巻き付け始めた。
イヤだともがくが、力が入らなくてまともな抵抗にもならない。
あっと言う間に根元を戒められて解放口をなくしたソレはピクッ、と切なくふるえた。

「十代目ッ、可愛いっス…」

そのまま、お尻に何かが擦り付けられた。
まさかと思うとやはりそれは獄寺君のペニスで。

「イヤッ!まだ無理、入らな…!」
「大丈夫です、ちょっと入り口濡らしてるだけですから…」

そう言って獄寺君は自分の先走りを俺のアナルに塗り付けた。
変な感触がする、気持ちが悪い。

「イヤだ、獄寺君…なんでこんな…」
「…ッ、すみません十代目…!姉貴のせいでこんなことに──!」

ビアンキに何の関係があるのだろうか。
しかし、すぐに何となく察しがついて俺は獄寺君に聞いてみた。

「…もしかしてビアンキの新しい技?」
「そんなんス…も、説明は後でしますんで今はヤらせて下さい…」

そう言うや否や、あまり慣らされていない俺のアナルに丸い何かが一粒押し込まれた。

「は、うっ!な、何!?」
「ただのアナルパールっすよ…」
「え、やだ!アゥ、ア、アァア…!」

次から次へと丸いソレは体内へ沈められ、俺の腹はそのものにより少しだけ膨らんだ。
そこを獄寺君が手のひらで押すと、中でパールがごろごろと蠢いて俺は悲鳴を上げる。

「ヒウゥゥ!ら、めぇ!それは、だめ…おかしくなるぅ…」

太股がびくびくと痙攣して、俺はあまりの快楽に涙をこぼした。
しかし、獄寺君は楽しそうに微笑むとアナルパールの糸についていたリングに指を通す。
それを少しだけくいっ、と動かすと中のパールが外にでようと動いた。

「ねぇ、十代目…このパール、一気に引き抜いたらどうなりますかね?」
「え、どゆ、こと…?」
「失禁するほど気持ちイイっスよ、絶対…」
「ぇ、嘘!いや、やめ───!」

俺の制止の声も聞かずに獄寺君は俺の性器の戒めを解き、先端に爪を立てる。
痛みと快楽に体が一気に高まった瞬間。
俺の体内にあったパールが勢いよく引き抜かれた。

「──────ンァァ!ア、ア゛、ア゛ァァ…!」
「わ、すげっ、じゅーだいめ…!」

獄寺君の言葉通り、恥ずかしげもなく失禁してしまった俺は言葉もなく全身を震わせ全てを放出しようと下腹を波打たせる。
やがて、でるものがなくなった尿道はパクパクと息づき、次に出される瞬間を心待ちにしているようだ。

「マジで失禁かよ…十代目可愛すぎます」
「うっ、ふぇ…おしっこ、出ちゃった…」

恥ずかしくて俺は両腕で顔を隠そうと腕をクロスさせようとした。
しかし、それは叶わず獄寺君に腕をシーツに縫いつけられる。
そしてアナルに熱い何かが押しつけられた。
この感触は、よく知っている…

「待って、獄寺君…!俺イったばっかりで…アゥ!」
「十代目…俺もう限界なんスよ…」
「え、嫌っ!嘘、ア、ンンンン!」

くぷん、と先端が含まされたかと思うと一気に挿入された。
息が詰まるほどの衝撃に、俺は固く目を瞑り、快楽に耐えるしかない。
獄寺君は本当に限界なのか、初めからガンガンと攻めてきて、俺も達しそうだ。

「──ッ、ハッ、十代目…ごめんなさい…」
「ヒッ、ウゥウウ…!あや、まるなよぅ…!」

なんでここまで来て謝るんだ、ずるいじゃないか。
なんだか悔しくて、俺は獄寺君の胸板に手を伸ばす。
そして両の乳首をつまみ上げた。
途端、獄寺君の顔が快楽で歪み、中のものもビクッと大きくなる。
してやったりと俺はニヤリと笑った。

「十代目…こんなことしていいと思ってんですか!」
「へ?あ、うそ!きゃうぅぅ!」

ぐんっ、と大きくなったソレは俺の前立腺を容赦なく突き上げ始めた。
ゴリゴリとシコリを擦りあげられて、俺のペニスは失禁してから全く触れられていないにも関わらず臍につくまで反り返っている。
もう、限界だ。

「ごくでぁく、イク!イクからおち、ちん触って!お願…」
「だめっスよ…このままイってみて下さい」
「そんなっ、無理!無理だよ!触って、あ、あ、あ…!」

ペニスの先端に熱が集まり、早く精を吐き出したいと渦巻いている。
触って欲しいと願えば願うほど、感じたことのない熱は俺を浸食していって。

「ア、イク!せーえき、出ちゃう…!」
「良いんスよ…思いっきり噴いて下さい」
「イヤァ、ア゛、あああぁああぁあ!」

集まっていた熱が一気に爆発した。
触られていないペニスからはどくどくと精液が溢れだし、そこは自分の体の一部じゃないのではないかという錯覚に陥る。
少し遅れてアナルに熱い飛沫が注がれた。

「ア、ァアア───…」
「十代目…愛してます…」

ちゅ、とコメカミにキスを落とされる。
こういう所が、なんか憎めなくて俺は獄寺君の体を抱きしめた。

「獄寺君、おれもだ、ょ…?」

そう言って抱きしめたところで俺は獄寺君の異変に気づく。
顔が真っ青で、脂汗をかいていて、これはまるで…

「ポイズンクッキング“死と隣り合わせの快楽”大成功だわ」
「なっ…ビアンキ!」

いつの間にか開いた扉にもたれ掛かっているビアンキの姿を確認して、俺はとっさに自分の体を隠そうとシーツをたぐり寄せる。
その横で獄寺君がドサリとベッドに沈んだ。
怖くなって俺はにじみ出る涙を止めることができない。

「これは媚薬の症状を混ぜ合わせ、その後標的を腹上死させるための究極の技!」
「いや、でも普通弟を腹上死なんかさせないよ!」
「良いのよ、隼人は…私の毒に耐性があるし」

大成功だわ、と高らかに笑いながらビアンキは出ていった。





残された俺は、死体のように動かなくなった可哀想な恋人をどう処置したらいいのか分からず、頭を抱えたのだった。










end




あきゅろす。
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