贅沢な世界


午前零時。

突然けたたましく鳴り出す電話。


夢の世界からいきなり呼び戻された青年は、ゆっくりと身を起こした。










贅沢な世界











「なんなんだ、こんな時間に…」

ランボは薄手の牛柄のシャツにジャケットを羽織って夜中の道を歩いていた。
呼び出されたホテルはいつものところ。
家からはそんなに遠くはない。
しかしこんな非常識な、しかも冷え込む時間に呼び出されるのはあまり気分のいいものではなかった。

(それでも、)

リボーンに逢える、と思うとそんな気持ちはどこかに消え去ってしまう。
ホテルに近づくに従ってランボの足は速まって、ついには駆け足に。
それほどにまで逢いたくて、ランボは胸を弾ませた。


ホテルに着くと、フロントには目もくれず、エレベーターに乗り込んだ。
リボーンがいるのは16階、ボタンを押す。
ゆっくりと扉が閉まってパッ、パッ、と昇るに従ってライトが灯る。
『16』が灯って、扉が開いた。
ドキン、と心臓が跳ね上がり、体が熱を帯びるのが分かる。

「リボーン…」

熱に浮かされたようにそう小さく呟くと、ランボはエレベーターから一歩を踏みだした。






ある客室の前に立つとランボはゆっくりとドアノブに手を伸ばし、扉を開ける。
開いたその先にはリボーンの大きな靴があった。
嬉しそうに顔をゆるませたランボは部屋の奥へと目を向けようとする。
しかし、途中に転がっていたあるモノに表情が固まった。
それは真っ赤なパンプス、もちろん女性物だ。

「あ…」

ふらふらとおぼつかない足取りで、ランボは扉を開けようとする。
しかし、中から軋むベッドの音、喘ぐ女の声が聞こえてきてその場にへたり込んだ。

「なんだ…俺こなくても良かったんじゃん」

がっかりとし、ランボは扉を少しだけあけて中の様子を伺った。

「あ、ぅ…」

そこには思っていたとおりの光景があった。
ブロンドの美しい女性がリボーンと抱き合っている。
ドアノブからはずるりと手が滑り落ち、柔らかな絨毯の上に力無く落ちた。
女性はもう限界が近いのか、ぎゅっとリボーンにしがみついて派手に喘いでいる。

「ンンッ!リ、ボーン私もう…!」
「イキそうか?」

リボーンのことだ、彼女が一度果てても二度目、三度目と抱き合うのだろう。



リボーンにはたくさんの愛人がいる。
彼女もその一人だろうし、ランボはそれを分かってリボーンと付き合っていた。
初めはリボーンの心が欲しくてたくさん苦しい思いをしたけれど、つきあいが長くなるに従ってそのような思いを彼が嫌がっているのもよく分かったし、愛して欲しいと思いながらも体だけの関係が続いている自分と同じ可哀想な女性が沢山いると思うとどうでも良くなった。
だから、涙はでない、何も感じない、痛みさえもない。



(こんな時間に呼び出しといて、がっかりだ)

ぷくっと頬を膨らませてランボは帰ろうと扉を閉めようとする。

「あっ、リボーンッ!愛してる、愛してるわ!」
「あぁ、俺も愛してるぜ」

女性が悲鳴のような声を上げて、果てた。
しかし、ランボにはその声がどこか遠くに聞こえる。
ただ、リボーンの放ったある一言が胸に突き刺さってランボは呆然とした。

(愛してる…?)

あのリボーンが。
あのリボーンがあんな台詞を吐くだなんて。
信じられない、ランボは一度も言われたことはなかった。
その女性は嘘だと分かっていても嬉しそうに微笑んでキスをせがんでいる。

「ね、もっと愛してるって言って…」
「あぁ、愛してるぞ」
「んっ、好きよ、リボーン…」

いつも自分は好きだという気持ちも、愛しているという気持ちも口にすると酷く殴られるというのに。

素直にランボは「ずるい」と思った。

今日はこんなに近くにリボーンががいても一人でいたい気分だ、早くここから逃げ出してしまいたい。
ランボは静かに扉を閉めようとドアノブに手を伸ばす。
しかし、自分が思っている以上にランボは動揺していたのか。
ドアノブに伸ばした手はずるりとすべって、扉は大きな音をたてて閉まった。

「────ッ!?」

不味い、とランボは素早く立ち上がって逃げようとする。
廊下へ繋がるドアを開けようとしたとき。

「なんだ、デバガメの趣味でもあったのか?」

ゴリッ、と後頭部に固い何かが押しつけられる。
おそらく拳銃だろう。

「いや、邪魔してごめん…俺こなかった方が良かっただろう?」
「あぁ、そうだな」

ほら、やっぱり…とランボは後頭部に押しつけられた拳銃を握ってゆっくりと逸らす。
そしてゆっくり振り返って、帰るからと一言告げた。
しかし、帰ろう開いた扉からはランボではなくブロンドの女性が横をすり抜けて出ていく。

「また呼んでね、リボーン」

連絡待ってるわ、と微笑むと彼女は颯爽と去っていった。
唖然として彼女の後ろ姿を見つめていると、リボーンに無理矢理部屋の中に押し込まれる。

「ちょっと…!俺は帰るから!てか帰れって言っただろ!」
「俺がさっき呼び出したからな」
「なっ…!」

さっきと言っていることが違う、とランボは抵抗した。
しかし、抵抗すればするほどリボーンの力は強くなり、ランボはベッドの上に押し倒される。
先ほどまで女とリボーンが“愛し合っていた”ベッド。

(嫌だ、よ…)

強引にズボンを脱がされ、足を開かされる。
リボーンはベッドの上に転がっていた使いかけのローションのふたを開け、ランボの股の間に垂れ流した。
ひやりとした感触にぎゅっと目を瞑る。
性急に後孔が暴かれていき、ランボはそれに着いていけない。

「はっ、待ってリボーン…!」
「待てねーよ、こっちは邪魔されてそれどころじゃねーんだ」
「そんな…!」

ぐっとアナルに押しつけられた熱い肉杭にランボは身を震わせた。

「やっ、う…ア、アァア…」

ズルズル…とランボのアナルはたやすくリボーンを受け入れる。
しかし、挿入の気持ち悪さになかなか慣れることができないアナルはキュウっとリボーンを締め付けた。
苦しそうにランボはシーツを手繰り寄せてそれに顔を埋めたが、すぐに顔を上げる。
そこからは甘い、女性の香りがした。

「アッ、いや!だめ…!」
「何がだめなんだ」

にやりと笑ってリボーンは中途半端に勃起したランボのペニスを握り、やわやわと刺激を与える。
するとすぐにランボのペニスは立ち上がり、トロトロと滴をこぼした。
それをおもしろそうにいじりながら、リボーンはランボの両太股裏を押さえ込み、膝がランボの胸に付くくらいまで体を折り曲げる。
この体位だとランボのアナルはきつく締まるので、リボーンのお気に入りだった。
しかし、ランボにとっては狭い中を激しく擦られるので苦しい体位で。

「ひっ、ぐ…!苦ひ、くるひぃ…!」
「バーカ、いつもこれするとすぐイく癖して」

なんなら前触らずに後だけでイってみるか?とリボーンはランボのペニスから手を離すと代わりにその手を腹の上に置いた。
そしてぎゅっとランボの腹を押さえ込んだ。
声もなく、ランボは目を見開いてのけぞる。

「ほら、こうするともっといいだろ?」
「────ッ!?っ、ぅ、────!」
「ほら、尿道がぱくぱくしてきたぜ?」

腹を押さえたままペニスを出し入れする度、ランボの体は強ばってくる。
ガチガチと歯が鳴って、眦からは涙が溢れだして。
その表情を見る度もっといじめてやりたいと、残酷な思いが頭をもたげる。

「ほら、派手に噴きやがれ」
「イヤッ、イヤァァァァアア!」

びくっとランボの跳ね上がり、白濁が飛び散った。
それでもリボーンは律動をやめてやるつもりは全くなく、変わらずペニスをランボの奥に叩きつける。
リボーンが奥を突く度、ランボは精液を飛ばし、息を整える暇もない。
しかも射精が止まらず、ランボは泣きじゃくった。

「らめっ、止まらな…!」
「うっせー、俺がイくまで付き合いやがれ」

そんな、とランボが抵抗する前に激しく揺さぶってやるとランボの口から意味をなさない言葉ばかりが溢れだす。
一番感じる前立腺を集中的に突き上げてやると、ランボはシーツをきつく握りしめて快感に耐えた。
次第に焦点が合わなくなってきたランボは、口の端から唾液を垂れ流しながら小さな声で愛を呟いた。

「あ、いして、る…」
「あぁ?」
「リボーン、愛してる愛してる愛して…る」

熱に浮かされたように何度も何度も。

「嘘でもいいから、愛してるって言って…」
「バカ言ってんじゃねぇ、そんなこと言ってる暇があったら弛んできたケツ穴でも締めとけ」

バシッ、と頬を容赦なく殴られる。
口の端からわずかに血が流れ出した。
リボーンはランボをバカにしたようにふんっ、と鼻で笑うと抱えあげた太股をゆっくりと辿ってなめらかな尻をなで上げた。
そして手を振りあげると、平手で打つ。
途端、ランボは痛みできつくアナルを窄ませた。

「ほら、やればできるじゃねぇか」
「痛、うっ!ヒッ、ア、ア゛ー!」

繰り返し尻を叩かれて、ランボの尻にはたくさんの紅葉が浮かび上がる。
そのまま先ほどより激しく、深く抉られてランボはガクガクと体を震わせた。
叩かれたところまでがじくじくと熱を帯び初め、ランボの体を犯す。
もう出る精液はなくてぴゅっ、ぴゅっと透明の液体がペニスから飛んだ。

「ハッ、男のくせに潮噴きやがって…このド淫乱め…」

そう言葉でもランボをいじめて、リボーンは中に自らを放つ。
熱い迸りを中に感じてランボは激しく達し、そのまま意識を失った。











セックスの後に目が覚めるのは必ず痛みを感じたときだ。
今日はリボーンに髪の毛を引っ張られて目が覚める。
時計を見ると深夜二時前で、気を失っていた時間はほんの少しだと伺い知れた。

「さっさと出てけアホ牛」
「………」

相変わらず酷い。
さっきの女の人には優しく、愛を呟いていたのに。

俺だって、俺だって。

(嘘でも愛してるの一言が欲しいのに)


嘘でも良いから、目を見て一言だけ。
俺だけに呟いて欲しい。





何も感じない、痛みもない贅沢な世界に俺の心はいたというのに。

また醜いこの世界に帰ってきてしまった。

でも。

泣いて泣いて、すべてを出し切ったらまたこの“贅沢な世界”に帰ってこれるはず。





だから今夜は、一人になったら久しぶりにたくさん泣こうかな、と思った。








早く、痛みに慣れろ








end











あーあ、やっちゃった。
ランボさんいじめたかったんです。
すみません。






あきゅろす。
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