愛のシルシ10


俺の体に手を這わした古泉は、ゆっくりと服を脱がしていく。
古泉の指の動きをぼんやり眺めていると、早くして欲しいのかと意地悪に笑われた。
馬鹿を言うな。

「いい、から……さっさとしろ……」
「了解です」

それっきり口を噤んだ古泉は露わになった俺の肌を撫で、早急にズボンに手をかけた。
いつもなら丹念に乳首へ愛撫を与えてくれるはずなのに、本当に余裕がないらしい。
そんな古泉が可愛くて、俺は古泉の頭を包み込むように抱いて、こっちもしてくれと乞うた。

「ようやく積極的になって下さったんですね」
「余計なことを言わなくて良いから、早くしろ……!」

眉を寄せ、切なそうに息を吐き出した古泉は、俺の胸の飾りに唇を寄せる。
ちゅ、と吸われながらすでに熱く張りつめた下半身をなで上げられた。
やばい、気持ちがいい。
古泉が久々なら、俺だって久しぶりなのだ。
ずくん、と疼いた性器を下着の上から触れられる。
形を確かめるようなその動きに、腰が震え上がった。

「ひっ、い、あぁ!」
「あ……もう溢れてる」

可愛い、と耳元で囁かれて頬が熱くなる。
古泉に愛されていると感じるような言葉が、愛撫よりもキスよりも感じる。
男だけれど古泉に可愛いと言われれば嬉しくなったし、もっと言って欲しくなった。
そんな俺はおかしいのかもしれないが、古泉が好きで、好きで、たまらない。
俺の好きと同じくらい、古泉だって俺を好きでいてくれるはずだ。
今は、今だけは……
ずき、といきなり胸が痛む。
余計なことを考えてしまった罰だ、と俺は内心ため息をついた。
セックスの最中にこんな考え事なんて、最悪だ。

「あ、ぅ……!こ、いずみ……ごめっ……」
「大丈夫、気にしないで……」

あなたがまだ迷っていることくらい、気づいていますから、と優しく言われて涙が滲む。
もう一度ごめん、と謝ると、古泉は困った笑みを浮かべた。

「本音を言うと僕に集中して欲しいですけどね」

次の機会には僕だけにして下さい、と言える古泉はすごく心が広い。
すごいなぁ、俺なんて古泉と真反対だ。
狡くて、しつこい。
さっきから俺は古泉と自分が釣り合うかどうかばかり考えている。
古泉はそんなこと全く考えていないだろうに、俺は汚い奴だ。
こんな俺は果たして古泉の隣にいてもいいのだろうか。
頭がぐるぐるして、気持ちが悪くなってくる。

「あなた……大丈夫ですか?」

古泉の心配そうな声が耳に入って、俺ははっとする。
見上げた先には本気で俺を心配している古泉の顔があった。

「顔色が悪いです……やっぱり今日はやめましょう」



続く


あきゅろす。
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