欲情ボーイ



「こ、古泉……!やめ、ろ!」

彼の僅かな抵抗、涼しい室内、大好きな匂い、興奮する。
念願かなった僕は、今まさに、彼を彼のベッドに押し倒している。


彼の家の人たちが実家に帰るという話を聞かされたのは、ちょうど一週間前だった。
妹さんと買い物をしていた彼にたまたまデパートで出会い、そのとき僕は朗報を耳にした。

「あのね!来週おじいちゃんおばあちゃんのおうちに行くの!」
「おや、それは良い話ですね。ご家族そろってですか?」
「ううん、キョンくんは行かないんだって」

それを妹さんが口にしたとき、彼の肩が大袈裟に揺れる。
……なるほど。

「もう良いだろ、行くぞ」
「あ、待ってよキョンくーん!」

またね、古泉君!と手を振った妹さんは先に行ってしまった彼を追いかけていってしまった。
なるほど、来週彼は家で一人なのか……
先日勝手に彼に押しつけた約束を思い出す。
あれを覚えていてわざわざ一人残った、だなんて可能性は皆無だな。
特に彼に限っては。

そう、思っていたのだが、だがしかし、だ。


ご家族が旅だった日の夕方頃、彼から一通のメールが届いた。
内容は一言だけ。

「来ねーの?」

どういう事だ、とか、もしや待たせていたのか、とか全部吹き飛ぶくらいの衝撃だった。
慌てた僕は適当な鞄に着替えと生活必需品だけをつっこんでアパートを飛び出す。
全速力で走っていって彼の家を見上げれば、彼の部屋の窓から誰かが顔をのぞかせていて。

「遅せぇよ」

ぶっきらぼうに口元がそう動いた気がした。
肩で息をしながら玄関の前に立てば、上から降りてきた彼が鍵を開けてくれる。

「あ、の……!」

待たせてすみません、まさかあなたから誘われてるだなんて思いもしなくて…!と早口で言えば、そんなわけ無いだろ!と怒鳴られた。
彼はいつも素直じゃないから本当のことは言ってくれない。
本当は、誘ってくれた癖して、誘い方も素直じゃないなぁ……

「あがっても、良いですか?」

そう言えば、彼は無言で踵を返すと先に階段を上がっていってしまった。
後ろ姿からでもはっきりとわかる、彼はかなり照れている、耳が真っ赤だ。
今すぐ抱きしめたい気持ちを押し込めて、僕も階段を上がっていく。
彼の部屋に入れば、ベッドの上で寝ころんで雑誌を見ている彼が目に入る。
どうせ読んでる振りをしているだけで、内容は全く頭に入っていないだろうな。

「ねぇ、しましょう」
「なにを」
「エッチなこと」

おまえ、来てから早々それなのかよ!と怒鳴られたが、もうダメだった。
可愛い彼に誘われるだなんて、たまらない。
たまらなく、興奮する。
ベッドに腰掛けて、彼の腰に手をおいた。
そのまま人差し指でするする、と背中をなぞる。

「ん、んふ……!」

びく、と体を揺らしながら鼻を抜けたようなため息を漏らした彼。
多少なり期待していたから、抵抗しないんじゃないですか?
本当に嫌だったら思い切り振り払ってくる癖して、分かりやすいなぁ。

「だってこの短パンだって、誘ってる証拠でしょ?」

先日訪れたときと同じ、短いズボンから細い足を露わにさせて、もう誘っているとしか思えない。
彼の上に覆い被さった僕は、首筋を舐め上げながら手を潜り込ませて彼の胸元のTシャツをたくし上げる。
嫌だ、と言うように身を捩った彼だったが、乳首を捕らえられてすぐに抵抗をやめてしまった。

「腰、浮かせて下さい」
「ん……」

ゆっくりとした動きで腰を上げた彼は、尻を僕に擦り付けてくる。
可愛くてやらしくて、ぐちゃぐちゃにしてしまいたい。
乳首をくりくりと弄りながら、短パンの上から性器を撫で上げれば、そこはすでに張りつめていて笑みがこぼれる。
すぐにボタンを外して下着の中に手を潜り込ませれば、先端をぬとぬとにした彼の可愛いペニスが触れた。
そのまま引きずり出して外気に晒せば、僅かに反応してため息を漏らす。
感じやすい彼はちょっとした刺激にも敏感だ。

「擦りますね、ここ……」
「いちいち、言うな!あ、あ!」

しっかり握り込んで上下に擦れば、やらしい声を必死に我慢しながら彼はシーツに顔を擦り付け始めた。
そんなの、オモシロくない。
せっかくおうちの方がいないんだから、たくさん声を出して欲しい。

「可愛い声、聞かせて下さい」
「やだ、やだぁ……」

頑なな彼は弱々しく首を振ってそれを拒否する。
それじゃあ面白くない、と僕は唇を尖らせた。

「意地悪、しちゃいますよ」
「それ、も……いやぁ!」
「……だーめ、お仕置き」

お仕置きとか罰とか意地悪とか、とにかく一方的に虐められるのが好きな彼にわざとそんな言葉を選んで言ってやれば、彼は嫌々と首を振りながら涙をこぼした。
気持ちがいいだけの癖して。
ズボンをぐい、と下にずり下げて可愛いお尻を丸出しにする。
それから彼の入り口を探り当てて。

「ココ、虐めちゃいますね」
「や、あっ、ふあぁ───!」

ぬるん、と彼の体内に僕の指が飲み込まれていった。
あんまりスムーズだったからびっくりしたけれど、それほど彼が期待していたのかと思えば嬉しくて。
彼の気持ちがいい場所を探るように動かせば、すぐに良いところを掠める。

「ん、あ、ア────ッ!」

上がりそうになった嬌声をどうにか抑えようとするのが、また僕の情欲を掻き立てる。
我慢させたくない、もっと乱れて。

「声、出して下さいよ……」
「やっ、やぁ……!」
「ほら……っ!」

ぐり、と前立腺のしこりを抉れば彼は高い声を上げた。
前からはいやらしい液体がぽたり、と垂れてシーツにシミを作る。
嫌だ、と言い続ける彼の内部を何度も何度も刺激してやれば、ついに抵抗の言葉さえも忘れてやらしい声ばかり漏らし始めた。

「あ、あっ!そ、こぉ……!」
「気持ちいい?」

シーツに頬を擦り付け、お尻を高く掲げた彼は涙をこぼしながら首を上下に振った。
可愛い、可愛い可愛い……!
もう我慢なんてできなくて、ジーンズの中から性器を取り出す。
熱く張りつめた先端をぴた、と入り口に押しつければ物欲しそうに吸い付いてきた。

「こ、いずみ……」
「ごめんなさい……、入れたい……!」

そう切羽詰まった声で声で呟けば、僅かに目元を緩めた彼が僕よりもっと小さい声で、甘く囁いた。

「こいよ───…!」

彼の誘いは甘美で、断ることも押さえつけることもできなかった。
彼に押し入りたい一心で僕は腰を進める。
ぬ、と先端が入ると後は飲み込まれるかのように一気に埋まっていった。
暴れる彼の腰を押さえつけて両手で引き寄せると、決して逃げられないようにペニスをたたきつける。

「う、あ、ああぁ!」
「あなたのナカ、すごく熱くて、気持ちいい……!」
「言う、な!ひゃあ!あ、ソコォ……!」

小刻みに揺するように内部を刺激してやれば、ぎゅうぎゅうと僕自身を締め付けてきて。
なんて可愛いんだろう。
感じやすくて、エッチで、でもあんまり積極的じゃなくて。
そんなところが大好きだ、可愛くて愛おしくて、全部自分のものにしたくなる。

「ねぇ、あなた……全部、僕のものになって下さい……!」

つい、口から出た甘えた言葉。
決して言ってはならない、禁忌だけれど、甘くて骨の髄まで溶かされそうだ。
頭がクラクラして、あ、イキそうだと思う。
夢中で腰を動かして、でも彼に快楽を与えることも忘れないように前に手を回してペニスを擦る。
彼も限界なのか、ペニスを濡らす愛液の量が半端無い。

「あ、ぁ!こ、いず、み…!」
「何ですか……っ?」

とろとろにとろけた目で僕を見つめた彼は、ぽろりと涙をこぼして。

「とっくに、俺はおまえの、もんだよ───!」
「……え?」
「ばかっ、古泉の、鈍感!」

ぐずぐず泣き出した彼を、もう、僕は必死に抱きしめることしかできなくて。
胸の中に閉じこめて、大好きです愛しています、と囁いた。
月並みなことしか言えないけれど、これが精一杯。

「好き、好きです……あなただけ、だ……」

そう言えば、シーツを握りしめていた手が延びてきて、僕を抱きしめてくれた。






おわり


あきゅろす。
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