愛のシルシ3





「やっと、見つけました……!」

そう言って人ごみを掻き分けてやってきた大好きな旦那(?)にも視線を移すだけでそれ以上の反応が出来ない。
俺の様子がおかしいことに気がついた古泉は首をかしげながらどうしたんですかと顔を覗き込んできて、俺はやっとこさなんでもないよと笑顔でかえせていた。
どうにか誤魔化したつもりではいたのだが、そんな誤魔化しが通用するような男ではない古泉は何かあったのでしょう?と再度迫ってきて。

「………………」
「――――…言えないこと?」

黙っていれば古泉は小さくため息をつくと、ここは場所が悪いですから他のところに移動しましょうと提案してきた。
そりゃあ人の波でごった返す休日のデパ地下の通路のど真ん中でするような話ではない。
古泉は俺の手を引くと歩き出して、俺は泣きそうになっていた。
こんな人が大量に溢れている場所で男同士がお手手繋いで歩いているってだけで気持ちの悪い話なのに、古泉はそんなのお構い無しだ。
いいのかよ、お前は俺のせいで「普通の男じゃない」って目で見られるんだぞ?
それでもいいのか。
俺が古泉を解放してあげれば、そんなこともなくなるのに。
……子どもだって、出来るのに。

「そんな泣きそうな顔しないでくださいよ…」

地上に上がり、デパート入り口付近にあるベンチに俺を座らせた古泉は困った顔をして俺の隣に腰掛けた。
片手に持っていたビニールの中にはきっと今日の誕生日パーティーのために購入された、いつもの食事より豪華なお惣菜や食材が入っているのだろう。
きっと俺が困った事態になっているときにこいつは暢気に買い物していたんだからな。
いや、それは構わないんだ、こいつは今日誕生日の俺のために色々してやろうって気持ちでしてくれたことなのだから。

「僕、何か悪いことしましたかね?それともはぐれたこと、怒ってる?」
「そんなんじゃないし、お前は悪くないんだ……だから、気にするな」
「と、言われましても…折角のお誕生日でしょう?あなたの機嫌だけは直しておきたいところです」

どうしたらこの眉間の皴を緩めていただけますか?と俺には見えない部分に寄っている皴をぐりぐりと人差し指で突かれる。
やめろよ、と言うような気分でもなくてされるままになっていれば古泉はどうしたらいいのか分からないとばかりに顔を歪めて、俺の顔を覗き込んできた。

「本当に、どうしたんですか?いつもならやめろよ!って怒ってくださるのに」
「お前は俺に怒られたいのか」
「決してそういうわけではありませんが、あなたに怒られるのは嫌いじゃありません…と、話を替えようたってそうは行きませんよ」






続く


あきゅろす。
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