いらない59




その言葉を聞いて、僕はぼろっと涙を溢れさせた。
違う、違うんだ。
男であっても女であってもあなたはあなた自身だから、辛い思いをして欲しくない。
ただ、それだけであって、そんなことを言っていた頃の僕は本当に愚かだったんだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい…!」

そう言って僕が泣けば、彼も悲しそうな顔をしてもう謝らないでくれと言った。
彼がそう望むのなら嫌な思いはさせれないと口を噤む。
僕はどうしたらいいのだろうか。
どうしたら昔犯した罪を償えるだろうか。
そんなことばかり考えていれば、彼は困ったように笑って。

「そんなに謝りたいなら、その代わりにたくさん俺を愛して」
「──っ、でも!」
「良いから、早く…!それが一番、幸せ」

そう彼が微笑んで言ったから、僕は泣きながら彼のアナルに自らをあてがった。
狭い入り口がちゅ、と僕のペニスの先端に吸いついてきて、眩暈がする。
ゆっくりと彼の中に自身を埋め込んでいけば、彼は苦しそうに声を上げた。
アナルもぎゅうぎゅうと僕を締め付けていて辛そうだし、やっぱり今のタイミングで挿入はいけない。
もっと解してからがいいだろうと思った僕は、腰を引こうとした。
すると彼は嫌だと言わんばかりに足を絡み付けてきて、僕の腰の動きを阻止してしまう。

「なんで、ですか…!」
「嫌…!やめないで!」

辛いだろうにやめないで欲しいと叫んだ彼は、あろう事か自分から腰を押しつけてきて僕はびっくりしてしまう。
そんなにされたら僕も痛いし、彼だって相当痛いに違いない。
わかったからやらせてくれと言えば、じゃあ早くしてとようやく彼は腰の動きを止めてくれた。

「痛くなると思いますが…我慢、してくださいね」
「ん…わかってる」

彼はこくん、と頷くと僕の背中に腕を回してしっかりと抱きついてきた。
辛かったら背中に爪、たてても良いですよと言えばそんなことしねぇよと彼は笑う。

「いきます…」

彼の足をぐっと持ち上げ、どうにか挿入しやすい体勢にすると、僕は腰をまた進めていく。
彼は苦しげに息を詰まらせて喘ぎ、挿入の衝撃に耐えている。
こんなに辛い思いをさせていると思えば胸が痛んだが、彼は愛おしげに繋がっていく様子を眺めていた。

「入り、ましたよ…」

どうにかすべてを埋め込んだ僕は、小さな掠れた声でそう言った。
そうでもしないとすぐに達してしまいそうな程、中が心地よかったのである。






続く


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