ユメノツグナイ


寒い夜は暖めあいたい。

曇った空を見上げてただ、そう思う。
こちらの世界にきてはや一年が過ぎた。
エドワードは手元の本を置くと向かい側で文献に目を通しながらメモを取っている男に目を向ける。
この男はロケット科学研究室のサブリーダーだ。
かつ、顔が向こうの世界の「彼」に酷似している。
唯一違うのは瞳の色がブルーだと言うことくらい。
エドワードは気づかれぬよう小さくため息をついて立ち上がった。

「仮眠取ってきます」
「うむ…しっかり休みたまえ」

そう、目を向けずいって。
そんな仕草もあの人そっくりだ。









研究室より少し離れた仮眠室に入る。
カーテンのかかったベッドに倒れ込んで目を瞑った。
ふと聞こえてきたのはスレイベルの音。
あぁ、今日はクリスマスなのかと思う。
こっちにもクリスマスがあるのだなと思うと思い出すのは一年前のクリスマスの日。
あの日は雪が降って寒くって。
だからって彼はぎゅうっときつく抱きしめてくれた。
布団が厚いから大丈夫だって言うのにきつく抱きしめてくれたのだ。

ふと外に目をやると舞う粉雪。
あぁ、あの日と同じだと。
そう思うと自然と下半身に手が行った。

「ん…ふぁ…」

よく思い出して。
向こうの彼は瞳が漆黒だと言うことを。
体は見た目は着やせしてもとても逞しくて。
所々に火傷があったことを。
しっかり、明確に思い出して。

「ロイ…」


















「なんだね」










背後からの声にエドワードは飛び起きた。
みるとそこには瞳がブルーのロイがいて。

「君は私を通して誰を見ているんだ」
「う、ぁ…」
「君は私を見てはくれない」

徐々におおい被さり、いつのまにかエドワードはロイに押し倒される。
抵抗することも忘れ、エドワードはロイのなすがままになり、ただ震えた。

“偽物”のロイにこんなに心引かれてはならない。
今まで寸前のところで押さえていたものが決壊しそうになる。

「や、めて…」
「君はどうしたら私を見てくれるのだ」
「みな、見ない!」
「私はこんなにも君だけを見ているのに」

え…と小さく声を上げてエドワードは硬直した。

「ど、ゆこと…」
「好き、だよ」

真剣なまなざしで見つめられる。

あぁ、これはきっと去年のクリスマスが見せた夢だ。
夢なんだ。

そう思いこもうとするけど目の前の青にこれは現実だと突きつけられる。
やめて欲しい、こうやって戸惑うような事を言うのは。
惑わされたらもうだめなのだ。

「可愛いね、こんなにして」
「ぇ…あぁ!」

ちゅっと敏感な先端をつままれてエドワードは体をふるわせた。
久しぶりに他人に触られたそこは我慢できないとばかりにとろとろと先走りをあふれさせる。

「そんなに触って欲しかったんだね?エッチで可愛い体だ…」
「違う、ちがあぁあ!」

ゆるく握り込まれて擦られ。
それがとても気持ちよくて、背徳感に満ちていてエドワードは涙をこぼした。

「あっ!だめっ、だ!」
「なぜだい?」
「あんたは、違う!」

それを聞いてロイは悲しそうに顔を歪める。
それとともに手の動きが速まり、エドワードは目を見開いた。
ぐちゅぐちゅと音がして、エドワードの限界が近いことを物語る。
それを知ってロイはさらに激しくペニスを擦りあげた。

「ふっ、あ゛!イク、イクからだめえぇ!!」
「だめならやめてあげよう」

いきなりぴたりと動きが止まり、同時に根元をきつく戒められる。
それはこみ上げたものを寸前でせき止めた。
熱いものが下半身の中心に集まり、溶けていまいそうな感覚に陥る。

「い、イャア!おちんちん溶け…溶けちゃう!」
「どうしたい?」
「イきたい、出したい…!」

ぼろぼろ涙を流し、エドワードはロイにしがみついた。
するとロイは優しく微笑み、エドワードの頭をなでる。
そして啄むようなキスをすると笑顔を崩さず、こう言った。

「今だけでも私のことを見てくれるのなら構わないよ」
「見てる、ちゃんと見てるからぁ…」
「違う!」

ロイは声を張り上げた。
エドワードが途端、びくりと跳ね上がる。

「私の先を見るのではなく私自身をみてくれ!」

それはそれは悲痛な叫びで。
エドワードは心臓が締め付けられる。
しかしエドワードはそれをするのをおそれた。
向こうのロイを忘れてこちらのロイを愛する方が楽だから。
しかし、それは両方のロイに対して失礼な行為。
結局はどちらかを選ばなければならないのだ。

「俺、は…」

どうしたらいいのだろう。

「俺は…」







あんたのことは選べない。









「ごめん…」






「そうか…」

ロイはそう言うと俯いて何も言わなくなってしまった。
エドワードは唇をかみしめてロイを見つめる。

しばし沈黙が続いた。
しかしロイが口を開き、沈黙は破られる。

「そうだね、悪いことを言った…君の弱みをうまく利用しようとした、すまない」
「ロイ…」
「とりあえずここが苦しいね?楽にしてあげよう」

そういってロイはエドワードのペニスの根元の戒めを解き、上下に動かし始めた。
時間がたち、勢いをなくしかけたソコは再度刺激を与えられるとぴくぴくとふるえ、先端から涙をこぼす。

「ロ、イィ!あっ、あぁ!」
「予想以上に可愛くてたまらないよ…」
「あっん!ダ、メェ…」

エドワードは喘いだ。
悲しくてたまらないのに感情より体の方が優先される。
不意にロイはどんな顔をしているのだろうかと。
エドワードはうっすら瞳をあけてロイをみた。
泣きそうなブルーの瞳が揺れている。
そんなブルーがとても綺麗だと思った。

「あ、んたの…」
「…?」
「あんたの瞳はキレーだな…ッ!」

そう、息も切れ切れにエドワードはロイに言った。
ロイは驚いたように瞳を見開いている。
しかし、エドワードの言葉をやっと理解しロイは心の底から嬉しそうにほほえんだ。

「それは“私”に言ってくれたのだね、ありがとう」

ロイはエドワードの額に優しくキスすると激しく手を動かし出した。

「アッ、ちょ…待って!」
「いいよ、出しなさい?」
「ダメッ、ダメダメダメェ────!」

エドワードはビクビクッと震えてロイの腕を押さえる。
このままでは本当にロイの手によってイかされてしまう。
しかし、それはまったく効果を成さず、エドワードは顔を歪め、口の端からは唾液をこぼした。
尿道はひくひくと口を開き、中から熱いものがこみ上げる。

「イク…イクウゥ────ッ!」
「イってしまえ…っ!」
「ひぁ、きゃううぅぅっ!」

びゅくびゅくっと白濁がロイの手を汚す。
頭がくらくらして意識が遠のいていく。
閉じかける瞳の間からロイの顔を見つめた。
その顔はとても穏やかに微笑んでいて。
口元が微かに動く。










───好きだよ







暖かい日差し。

目を開ければブラインドから差し込む光がエドワードを包み込む。
寒いクリスマスの翌日だったが日差しだけは暖かかった。

「もう、朝…?」

もそもそと布団から這い出すとあたりを見回す。
そこに彼の姿がなく、エドワードは急に不安に駆られ、研究室に走った。
勢いよく扉を開けるとそこには研究仲間のハイデリヒしかいなくて。

「おはよう、エドワードさん」
「あ…ロイは?」
「ロイさんなら…」
「ここにいるよ」

不意に聞こえる彼の声。
慌てて声の方を見ればデスクの下からのぞく漆黒の髪の毛。
それは一度ゴンッ!とデスクの角に頭をぶつけて震えながらデスク下に沈んでしまう。

「ロ、ロイさん…?」
「う、だ、大丈夫だ」

苦笑しながらロイは立ち上がった。
その手には明らかに荷造りをしていましたというような段ボール箱。

「ど、うして?」
「ロイさん、ここを独立してご自分の研究所を持たれることになったんです」
「短い間だが、お世話になったね」

ロイは優しく笑ってエドワードをみた。
エドワードは訳が分からなくて泣きそうになる。
くしゃっと顔が歪んだのを見てロイはエドワードに歩み寄った。

「君の会いたい彼に早く会えればいいね、応援しているよ」

ぽんっと頭をたたくとロイはエドワードの横をすり抜け、扉に向かう。


離れるのはいやだった。
でもそれは自分のわがままだから。
最後に一言だけ、言わせて。







「あんたの、あんたの瞳は綺麗だな…!」
「エドワード…!?」

ロイは驚いてエドワードを振り返る。
そしてエドワードは泣きそうに顔を歪めて。

「あんたの瞳は好き、だ」

それだけははっきり伝えたかった。

それを聞いたロイは再びエドワードに近づいて素早くエドワードの額に口づけて。

「頑張りたまえ、いつでも私は君の見方だよ」
「うん…っ」

そういうと今度こそ別れの時だとロイは荷物を持ち直し振り返ることなく扉から出ていった。
彼の出ていったドアをじっと動かずエドワードは見つめる。

「エドワードさん…?」
「ん、あぁ…大丈夫だ」

にかっと笑ってエドワードはハイデリヒを振り返った。
そしてロイの出ていった扉に背を向け、窓際にある自分のデスクに腰掛ける。
外を見るとちらちらと雪が舞っていて。






この雪のようにあなたの気持ちも俺の気持ちもすぐ溶けてなくなってしまったら楽になるのに、ね?







end


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