いらない42




なんでこんなに俺は必死になっているんだろうか。
いや、古泉のことを好きなのが理由になるのもそうなのだが、なぜかこいつの話を聞いてみたいと思ったのだ。
それは先ほどの祐さんの話が気になったと言うのもある。
しかし一番の理由はもっと古泉を知りたい、と言うものだった。

「俺は、おまえのことをよく知りもしないで好きだと追いかけ回して…でもちゃんと知りたい、知って本当の意味でおまえを好きになりたい…!」
「…本当にしつこいですね、あなたも」
「そ、れにおまえはさっきもう俺には酷いことしないって言ったから…!」
「信じてるんですか?あれを」

そう言われて体が固まった。
そうだ、いつだって俺は古泉に騙されて裏切られてばかりだったじゃないか。
あれはあの時の気分で言っただけかもしれない、元々守る気さえもなかったのかも…?

「でも、信じたい…!」
「まったくあなたもバカですね…」

はぁ、とため息をついた古泉は意外にも俺の拘束を解いてくれた。
押さえつけられた肩は未だに痛んだが、構わない。
古泉がやめてくれただけでも嬉しくて、俺は泣きそうだった。

「でもあなたを上げる気はありません、お引き取り願います」
「話をするまで俺は帰らんぞ」
「…呆れましたよ、もう良いです。聞くだけ聞いて差し上げます」

はあ、と頭を押さえた古泉がついに折れた。
ここにいることを許された俺はほっと胸をなで下ろして。
今更だが、今日感じた震えもいつの間にやら止まっていて俺は深く息を吐き出した。

「俺はいつも好きだっていう自分の気持ちを古泉に押しつけてばかりでいけないと思った。でも古泉はそれに対して何も返事をくれなかった。なのに、俺のことは抱いた…それは何でだ?」
「言ったでしょう?性欲処理です、はっきり返事を出したらあなたを利用できないから曖昧にさせただけだ」
「お前は…本当は俺のことどう思っている?」
「…え?」

古泉の表情が固まった。
本当はどう思ってる?だなんて卑怯な聞き方だとは思ったが、本当に聞きたいのはこれなのだ。
どんな返事だろうが、もういいや。
古泉の本当の気持ちが知れたらもうそれでいい。
祐さんの話を聞いてすべてを信じた訳ではないが、古泉が俺のことを少しでも好きなら今のままで良い。
でも、今までのように嫌いと言われるようならば。

今度こそは────…




「俺のこと、心の底から嫌い?それとも、少しだけでも好きなところ、あるか?」
「あなたの好きなところ…」
「友達として、人としてでいいんだ…ちょっとでも、ある?」

そう尋ねると古泉は苦い顔をして唇を噛んだ。
ああ、この顔は決まって良いことを思っていない顔だ。
もう、答えは見えた。

「やっぱり嫌い、なんだろ。俺のこと」
「───え?」
「俺のこと嫌いだって言う時、いつもその顔する」

それだけ見慣れた表情なんだなと思えば悲しかった。
いつもこの顔をされて、俺は泣いてきた。
でも、もうおしまいだ。

いい加減俺も諦めればいいんだよな?

そうしたら俺だって傷つかなくて済む。








「もう、好きじゃなくなるから安心して」








続く


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