いらない33






もう頑張らなくてもいい?
何を言っているんだ、俺は古泉に認めてもらわないといけないのに、その努力さえもさせてもらえないのか。
俺は、頑張らないと好いてもらえないような奴なのに。
それさえも奪ってしまうのか?

「そんなの、無理だ…!」
「あなたは十分頑張った…次頑張るのは古泉一樹」
「何言ってるんだよ…!古泉が何を頑張るんだよ!」
「…自分の気持ちと向き合う努力をしてもらわないと困る」

はあ?と俺は口をあけた。
古泉が自分の気持ちと向き合う努力をしないといけない?
どういう事だかさっぱり分からん。
長門の真意がまったく分からなくて、俺は眉を寄せて長門を訝しげに見つめた。
そんな俺の視線に気付いてか、少しだけ表情を和らげて彼女はぽつりと呟く。

「大丈夫…きっと向き合ってくれる」



     ◇



翌日から学校に来てもいいと長門に言われていた俺は久々に登校していた。
久しぶりに会うクラスメートたちに大丈夫か、とか元気になった?としきりに声をかけられる。
女になって、さらに落ち込んで長門の家に駆け込んでました、だなんて言えない。
曖昧に笑って回りに愛想を振りまくだなんてまるで古泉みたいだ、だなんて頭の片隅で考えていると頭に酷い衝撃を受けた。

「い、ってぇ!」
「あんた、一週間も欠席するだなんていい根性してるのね!この埋め合わせはしっかりしてもらうんだから!」

そこに予想通り、険しい表情をしたハルヒが仁王立ちで立っていた。
こうなるのも想像していたのだが、その通りだな。
本当に、予想しやすい行動パターンを取る女だ、ハルヒという奴は。
俺は適当に分かっただの、放課後はきちんと参加するからとかいろんなことを言いつくろってどうにかハルヒから逃れる。
はぁ、とため息をついて窓の外を見やれば今登校してきたのだろうか、想い人の姿があった。
はっとした俺はすぐに視線を逸らす。
向こうはこちらの視線に気付いていないようで、黙々と歩を進め、昇降口に消えていった。

(あ、れ…?)

なんで、目を逸らしたんだろう。
いつもは嫌というくらい見つめてしまっていたのに。
なんで、手もこんなに震えているのだろう。
怖い思いだなんて一つもしていないのに、寒いわけでもないのに。
なのに、俺は古泉を見ただけでこんなにも震えてしまっている。

「なんで…だ?」

震える両手を見ながら、俺は頭の中がぐしゃぐしゃと混乱していくのを感じていた。





続く



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