酷愛4


エドワードは固まった。
しかし、口元は不気味に弧を描き始める。

「な、に言ってんだ…?」

かたかたと震えながらエドワードは小さくつぶやいた。

「そ、んなの信じれるわけないじゃん…」

それでもロイは真剣な眼差しでエドワードを見つめる。

「おまえは、あれだけ俺を苦しめて…それだって嘘だろう?そうやって俺に夢見させて、しばらく経ったらまた前と同じように…」
「違う!」
「だったらなんで今まであんなんだったんだ!説明してみろよ!」
「それは…」
「言えねぇんじゃないか!そらみろ、俺の思ったとおりだ!」

半狂乱になってエドワードは怒鳴り散らした。

エドワードがロイのことを信じられないのは当たり前だった。
あのように扱われて信じろと言う方がおかしい。

もう本当に耐えられないのだ。
こんなに辛い目に遭わせられるのはもうまっぴらごめんだ。

「それとも俺はあんたから逃げられないの…ねぇ、ねぇ!!」

ロイの肩を掴み、がくがくと揺する。

「頼むよ、俺、もぅ…イヤなんだ…」

ふわっとエドワードの体が再び倒れた。

「おい、エド!エド!」

ベッドの上に倒れたエドワードにあわててロイは声をかけた。
顔は真っ青で血の気が引いている。
ロイはこのままエドワードが死んでしまうのではないかと思い、必死に声をかけた。

「エド!エド、エドワード!頼む、目を開けてくれ…!」

エドワードの手を取り、ぎゅうっと握りしめて。
しかしエドワードはいくら呼んでも目を覚まさない。
ロイは部屋を飛び出し、ホークアイに聞こえるように大きな声で叫んだ。

「中尉、医者を呼べ!すぐ、すぐにだ!」







「大佐殿、目を覚ましてから呼べと言いましたが…」
「一度目を覚ましたのだが、再び気絶してしまったのだ!」
「…致し方有りませんね、とりあえず妊娠しているかどうかの検査はしておきましょう」
「しかし、妊娠は二週間経たないと分からないのでは…?」

ロイは産婦人科は専門外だ。
しかし少ない知識の中で妊娠は二週間経たないと分からないと言うのは分かっていた。

「いろいろな可能性が考えられますからね、早期検査で分かる部分もあるのですよ」

そう言って医者は「失礼します」とエドワードのズボンを脱がせた。
そして腰の下に枕を敷き、足を立てさせ、広げる。
膝の上にシーツを掛け、できるだけエドワードに失礼のないような格好にさせた。

「…これは」

医者が下肢をのぞき込むと下着が赤く濡れていた。
となりでロイが息をのむ。
急いで脱がし、レイプによる傷かどうか調べた。

「これは…奥様、生理が始まったようですね」
「生理前というと一番妊娠しやすいのでは…!」

焦るロイを医者は宥めて。

「まだ分かりません、希望を持って下さい」

そう言って拡張器を取り出すと、花弁を左右に開いて挿入した。
ピンセットにガーゼを挟んで中をかき出す。
そしてそれを持ってきた袋に入れた。

「数日こうさせてもらいます」
「…分かりました、よろしくお願いします」

ロイは深々と医者に頭を下げたのだった。








それから生理が終わる一週間、医者は毎日やってきてエドワードの血液を採取して帰った。
エドワードと言うとロイに対して一切口は開かず、ベッドの中で過ごしていた。
ただ、エドワードは生理痛がひどい方であったから辛そうにしているのを見かねたロイが持ってきた生理痛の薬だけは素直に受け取っていたのだ。





時間は早いもので例の事件から一週間と一日経過した。
相変わらずロイはエドワードに口をきいてもらえずにいる。

「エドワード、朝食は何が良いかい?」
「……」
「では、いつものにするな」

何も答えないエドワードにロイは微笑んで寝室を後にした。

ここ一週間、ロイはずっとエドワードのそばにいた。
仕事も寝室内の小さな机でし、読書もこの部屋でした。
ベッドはキングサイズのもの一つしかなかったからロイは脇のソファで眠った。
ロイの体は大きいからソファに納まるはずがなく、背中と肩を痛めながら寝て。
だからといってエドワードの隣で寝るわけにはいかなかった。
エドワードはロイ以上に傷を負っているということはロイにはよくわかっていたからだ。

「今日は医者が来るから…体を綺麗にしておかないかい?」
「…っ!?」

エドワードの肩がびくっと震えた。

「私が拭こうかい…?」

ぷるぷるとエドワードは首を振った。
するとロイは再び微笑んで。

「では温かいタオルを用意しよう、自分で拭けるね?」

そういってタオルを取りに行った。
エドワードはロイの消えていった扉を見つめながら眉を下げる。

この一週間でロイの態度は一変した。
どんなにエドワードが嫌な態度をとっても微笑んだ。
そして気遣うのだ。

大丈夫かい?
痛くないかい?

そして時々見せる泣きそうな笑顔。

エドワードはいくらロイにあのように扱われた過去があっても心が痛んだ。

「エド、タオルだよ」

がちゃっと扉を開き、ロイは戻ってきた。
そしてサイドテーブルにお湯の入ったたらいを置き、温かいタオルをエドワードに手渡す。

「では私は向こうにいるから…」

そういって再び扉の向こうに消えていったロイを見ながらエドワードは泣きたくなった。

このまま信じてしまいたい。
でも裏切られたら?
またひどく扱われたら?

ロイに「好き」と言ってしまいたい。
でも嫌いだと言われたら?
「あのときの言葉を信じたのかい?愚かだね」とあざ笑われたら?

怖い

怖い


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い───ッ!











「失礼します」

扉を開いて入ってきたのは毎日エドワードの元に訪れていた医者とロイだった。
エドワードは気だるそうに起きあがり軽く会釈する。
すると医者はにっこり笑い、ベッドのそばにある椅子に腰掛けた。
ロイも医者に続いて椅子に腰掛ける。

「検査結果が出ました」

鞄をゴソゴソと探りながら医者は言った。
エドワードとロイに緊張が走る。

「妊娠はしていませんでした」
「…ぁ」

エドワードはほっとして体から力が抜けるのを感じた。
良かったと。
そう思って再び視線を医者に戻そうとしたとき。

「良かった…!」
「───ッ!?」

一瞬何が起こったのか分からない。
ただ、久々に感じる温もりと。
たくましい腕と胸板と。

大好きなにおいがした。


「良かった、本当に良かった…エドワード…」

エドワードを抱きしめ、ロイは言った。
それは声と言うよりうなり声に近く、心からロイが言った言葉だと言うことは明確だ。
驚いたエドワードはしばらく状況を理解できず、目をぱちくりさせていたが、ようやく状況を理解できたのか、両の手でロイの胸板を押し返そうとする。
しかし、それはびくともせずエドワードの前に立ちふさがったままだ。
しばらくエドワードは抵抗を試みたが、離してもらえないことを理解するとあきらめるように抵抗をやめた。

「しかし、ですね…」
「はい、」

医者の言葉にロイは顔だけ医者に向ける。

「今回妊娠していなかったのは排卵されていなかったからです」
「それはどういう…」
「つまりできるはずの卵ができてないのです」

ロイは驚き、目を見開いて。

「おそらく奥様は生理がきたときからそういう状態だったと思われます」
「そうなのか、エドワード?」
「…わかんねぇよ…」

久々にロイの質問に答えたエドワードだったがそれに喜んでいる場合でもない。

「無自覚ですからね、でも大丈夫です、ちゃんと治りますから」
「…そうか!」

うれしそうにロイの声があがる。

「原因の一つはトレーニングのしすぎです。奥様は普通以上に体を鍛えられていますからね、もう一つは疲れとストレスです。十分に休まれてくださいね」

そう告げると医者は荷物をまとめ、新婚の二人の部屋を後にした。

医者の気配が完全になくなってからエドワードは再び本格的に抵抗を始めた。
身をよじり、腕から抜け出したくて。
こんなに温かい腕の中にいるのは怖い。
すがりついて、甘えたくなるから怖いのだ。
無言でロイの腕の中で暴れるエドワードをロイは強く抱きしめた。








しばらくしてロイはエドワードを解放する。
時計を見て何かを考えるようなそぶりをみせた。
そしてエドワードに問いかける。

「そろそろ夕飯を作らなくてはね、なにが良いかい?」

エドワードの前髪をかき分け、頬をさすりながらロイは問うた。
しかしエドワードは下を向いて以前同様なにも言ってくれない。
ロイは小さく笑ってあるもので何かを作るからと言い、ベッドから降りた。
と、くんっと後ろから引っ張られる感触。
何かがシャツに引っかかったのかと後ろを振り返ると。

「……」

シャツの端は。
小さい手に握られ、張っていた。

「エ、ドワード…」
「……が、いい」
「え…?」
「シチューがいい」

そう告げるとエドワードはシャツの端を離した。
そしてもそもそとベッドから出ると部屋から出ようとする。

「ど、こ行くんだね」
「……トイレ」
「は、はぁ…」

絶句してなにも言えないロイを取り残してエドワードは廊下にでる。
そしてさっさと用事を済ませるとまた寝室に戻った。

「…あんた何してんの」

そこにはベッドサイドに座りぼんやりとしているロイがいた。
口は開いており、目は一点を見つめている。

「何情けない顔してんだ」
「んぁ、あ、ああ!買い物に行ってくる!」

ばっと立ち上がり慌てながらロイは買い物に出かけていった。

エドワードは布団には戻らず、ロイがいつも寝ているソファに腰掛けた。
そこはやはりベッドより堅くて狭い。
ソファに丁寧に畳んであるタオルケットを広げるとロイの匂いがする。
さきほど抱きしめてくれたときの匂いがして胸がきゅうっと締め付けられた。
タオルケットを抱きしめ、匂いを胸一杯に吸い込む。

「俺、どしたらいいんだろ…ロイ…」









その晩、エドワードは久しぶりに食卓で食事をとった。
ロイと向かい合ってとる食事はとてもおいしくて。
しきりに話しかけてくるロイの話を聞きながらエドワードはちゃんと返事をしたかった。
しかし警戒心と恐怖心からか、会話ができない。
笑いながら少しでもエドワードを楽しませようとするロイを見て、エドワードは胸が苦しくなる。
でもこれも演技だったら…と思うとエドワードは素直になれなかった。

すべて食事を終えるとロイはエドワードにバスタオルを差し出した。

「久しぶりに風呂に入ってきなさい、あ、しかし無理だったら…」
「入る」

そっけなく返事をし、エドワードはロイからバスタオルを受け取ると風呂場に向かう。
その背中に感じるロイの嬉しそうな、温かい視線を感じてエドワードは急いで風呂場に向かった。

久々の風呂でエドワードは綺麗に体を洗う。
するとうっすらと鬱血したあとが目に入った。

「ぁ…あ…」

まざまざとあの日のことを思い出す。
体がふるえてエドワードはタイルに座り込んだ。
涙があふれて止まらない。
きっとロイはそろそろ自分の体の傷が消えた頃だと思い風呂を勧めてくれたのだろう。
しかしまだ消えていなくて。
エドワードは震える体を奮い立たせて立ち上がった。

大丈夫。
大丈夫だから。

堅く唇を噛んで、エドワードは風呂場を後にした。




風呂から部屋に戻るとロイは仕事の書類をテーブルに広げ読んでいた。
エドワードの姿を確認するとすぐに書類を片づけ、寝る支度を始める。

「久しぶりの風呂はどうだったかい?」
「うん…それよりあんたは…」
「私はもうシャワーを浴びたから良いよ」

それよりもう電気を消して良いかと問われてエドワードは頷いた。
パチンとボタンが鳴り、明るかった部屋が闇に包まれる。
その闇の中を唯一照らす月の光がロイの姿を浮かび上がらせた。
狭いソファに体を横たえようとしながらロイはエドワードにいつものように言う。

「おやすみ、エドワード」
「………」

いつも通り。
そう思ってロイは苦笑しながら布団をかぶった。
しかし、ここからがいつもと違った。

「…おい」

ベッドの方からエドワードに呼ばれてロイは起きあがった。
こうやってエドワードから話しかけられるのは久しぶりでロイは嬉しくてたまらない。
はやる気持ちを抑え、なんだい、と聞き返した。

「あんたそんなとこで寝て体痛くないのかよ」
「…まぁ痛くないと言えば嘘になるが」
「…こっちで寝ればいいのに」
「…え?」

ロイは驚いて固まる。

「あんたの体は大きいんだ、ソファに納まらない」
「良いのかい…?」
「何で俺に聞くんだ、あんたのベッドだろ」
「あ、あぁ…!」

ロイは転げ落ちるようにソファから降りるとベッドに近づいた。
エドワードはベッドの左側に寄ってロイのスペースを空ける。
ロイはおそるおそるベッドに入り込んだ。
そこにはエドワードの温もりが残っていてロイは嬉しくなる。
ロイに背を向けて横たわっているエドワードを見て不意に抱きしめたい衝動に駆られた。

「エドワード…」
「ん…」
「触って…良いかい?」

そう問うとエドワードの体が固まった。
それからさらに深く布団の中に潜り込もうとする仕草を見せる。
それは否定の意味を含んでいてロイは残念そうにため息をついた。
しかし、エドワードの美しい金やそれが垂れているうなじから発せられる色気にロイは早々に我慢の限界に達していた。

抱きしめたい。
この腕に抱きしめたい。



「やっぱりだめだ」
「え、───ッ!?」

ぎゅうっと後ろから抱きしめられてエドワードは戸惑う。
しかしなぜか抵抗する気にはならなかった。
たぶんそれは自分から誘ったから。
心のどこかでロイを感じたいと思っていたからだ。

「…いやがらないのかい?」
「…あんたに聞きたいことがある」
「なんだい…?」

少しエドワードは言うのをためらう。
しかし意を決したように口を開いた。

「あんたの過去ってなんだ…?」

ほう…と息を吐いてロイは驚いた、と口にした。

「どこで聞いていたのかね?」
「あの日、中尉が大きな声出したから目が覚めたんだ…その時に聞いた」
「まさか聞いていたとはね…」

ロイは深く息を吸い込むとエドワードに尋ねた。

「聞きたいかい…?」
「聞きたいから聞いたんだ」
「もっともだ」

ロイは苦笑し、君には負けるよとつぶやいた。

「今から話すことを信じてくれるかい?」
「内容によればな」

そういってエドワードは肩越しに振り返り、真剣な眼差しでロイを見る。
ロイはその瞳を優しく見つめながら口を開いた。

「私には愛する母親がいた。しかし、彼女は私のことが嫌いだった」

そのはじまり方にエドワードは大きく目を見開く。

「私は錬金術が子供の頃から使えてね、それで家族親族から忌み嫌われていたんだ」

しかし、ロイは母親に愛されたくていろいろと考えた。
そこで行き着いたのが「錬金術をプラスイメージにすること」だ。
自分が嫌われる一番の理由は錬金術だから。
それを良いものに変えてしまえば自分もいい方に見てもらえるはず。

「私は必死で錬金術の研究をした、そしてついにあの錬成陣の元となるものにたどり着いた」
「サラマンダーの…?」
「そうだ」

焔の錬成陣を完成させた少年は母親に見せるべく、嫌がる母親を呼び出した。
そして、錬成陣を発動させたのだ。

「錬成は大成功だった、素晴らしい焔が錬成されたんだ」
「だったらあんたは母親に…」
「私は希望と自信に満ちた瞳で母親の方を振り返った、彼女はどんな顔をしていたと思う?」

エドワードは再度肩越しにロイを振り返った。
それはロイの腕がかすかに震えていたからだ。
振り返ったそこには泣きそうな彼の顔があって。

「ろ、ぃ…」
「母親は恐怖に支配されたような顔をしていた、そしてこう叫んだんだ」



“悪魔だ”



「そ、んな…」
「それから続けて私は悪魔の子を産んでしまった、そう言って彼女はそれ以来私と口をきいてくれなかった」

あまりにも残酷な結末にエドワードは何も言えずただロイを抱きしめたいと思う。
しかし、後ろから自分自身が抱きしめられていたから回された腕を強く抱きしめた。

「私はただ愛してもらいたかったのだ!だから努力し自分の信じたやり方で愛を取り戻そうとした、しかし私の愛は受け入れてもらえなかったのだ!」
「ロイ!」
「しかしそれからと言うもの愛することができなくなった、私は非常に臆病になってしまった、怖かったのだ…!」
「分かった、分かったから…!」
「私は、愛する人に愛されたかっただけなんだ…!」

エドワードはいつの間にかロイの腕の中で反転し、ロイに向き合っていた。
そしてその腕はしっかりとロイの首に回されていた。
そしてきつくきつく抱きしめる。
ロイも今まで足りなかった分かのごとく、エドワードを強く抱きしめた。

「エドワード、私は君を愛していた、ずっと前からそう思っていたんだ」
「うん…!」
「でも怖くて…すまな、すまない…!君はあんなに私を愛してくれたのに、それを拒んでしまった!」
「ロイ、もう良いから、ね?」

エドワードはロイの頭を抱き込み、優しくなでてやる。
エドワードはロイが頭を押しつけているところのパジャマが温かく濡れるのを感じた。
ロイは泣いている。
エドワードは優しく腕をほどくと、ロイの顔を両手で包み込んだ。
そして流れ落ちる温かい涙を拭う。

「ロイはすごく優しい人なんだ」
「そんなことはない、私は酷い男だ…」

エドワードは首を振るとロイに笑いかけた。

「あんたは世界一優しい、こんなに綺麗な涙が流せるんだ」
「エド…」
「俺が好きになった男なんだ、絶対最高の男に決まってる」

へへっとエドワードは笑ってロイの髪の毛をくしゃくしゃっと掻いた。
ロイはたまらずエドワードを抱きしめる。

「もっと責めていいのだよ…」
「何言ってんだ」

エドワードには分かっていた。
ロイがしたことは間違っていないこと。
そしてそれが母親に対して愛を求めた子どものする当然の行為だと。
エドワードも愛する母を取り戻したくて人体錬成をしたのだ。

「結局は俺たち、似たもの同士だな」
「そのようだね」

ロイはエドワードの前髪をかき分けると額に口づけた。

「私は君が好きだ」
「…うん、俺も、好き…」

エドワードはきゅっとロイを抱きしめた。
こんなにも愛おしい。
もっと抱き合って愛を確かめたい。
しかしロイはエドワードの腕をほどき、ベッドから起きあがる。

「ロイ…?」
「すまない、一緒に寝れないよ」
「え?」

ロイは優しく微笑んでエドワードの頭をなでた。
エドワードは訳が分からなくて泣きそうになる。

「なっ、で?だめなの!?」
「すまない、君は悪くないよ…ただ…」

ロイはそうやって言葉を濁す。
それがたまらなく不安でエドワードは瞳から涙を流した。

「違うんだ、エド…!」
「だったらなに、ねぇ?」

ロイはうーっとうなった後、思い切ってエドワードの手を取った。
そしてあるところへ押しつける。

「ぁ…!」
「この様だ、我慢できない…君の隣で寝たら私は確実に君を襲ってしまう」

エドワードは固くなったロイの股間に手を押しつけたまま顔を赤くした。

「…俺イヤじゃない」
「え…」
「俺イヤじゃないよ、だから…」

ぎゅっとロイにしがみついてエドワードはロイの唇に自分のを押しつけた。
そろそろと舌を出し、唇をなぞるとロイは口を開けてエドワードの舌を招き入れる。
そして濃厚に絡み合わせ、エドワードの腰を引き寄せた。
ちゅくちゅくと唾液が音を立て、エドワードを煽る。

「…っ、はぁ、ロイ…」

名残惜しげに唇が離れ、銀の糸が二人を繋いだ。
それが妙にいやらしくてエドワードは体が熱くなる。

「俺も、俺もしたいの…!」
「しかし君は不感症…」

ロイのその言葉を聞いて、エドワードは恥ずかしそうに笑った。
そしてくいっと足を開くとロイの手を自らの股間に導いた。

「ね、触ってみて…?」
「なっ…!」
「良いから、早く」





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