シリウス3




「では、また明日会いましょう」

にこり、と笑って古泉はなにも無い空間に手を伸ばした。
くにゃり、と古泉が触れた部分が歪む。
ああ、ここが境目か。
すう、と古泉の体は僅かな光に包まれながら飲み込まれていく。
それを見ていると、苦しくて、気持ちが悪くなった。

だめだ、一人で行かせちゃいけない。

なぜかそんな気持ちになる。
慌てた俺は咄嗟に古泉の手を掴み、奴の体をぐん、と境目に押し込んだ。
こんにゃくのような、気持ちの悪い弾力に体が吸い込まれる。
しかし、そんな感触も一瞬で、目を開ければ既視感のある灰色空間に飲み込まれていた。

「…あなた、どういうつもりですか」
「五月蠅い、俺がきたくてきたんだ」
「今回は前回のように守って差し上げられませんよ」

そう言って古泉は上を見上げた。
そこには前回見たとき以上に近くにいる、ハルヒの苛々の塊。
ひっ、と息をのむと古泉は呆れたようにため息をつく。

「前回は場所を選んだのですが、今回は選びようがありませんでした」
「…いきなり付いてきた俺が悪い、好き勝手逃げまくるから放っておいてくれ」
「と言われましても…」

あなたは大切な鍵ですから、だなんて呟きながら古泉は俺の額をトンッ、と突いた。
途端、俺の周りに青白い光を放つ薄い壁が生まれる。
これは所謂バリア、というやつか?
戸惑いながらぺたぺたとそれを触っていると、古泉の体がふわりと浮き上がった。
それと同時に奴の表情は冷たく、厳しいものとなる。
あまりの変わりように背筋がぞくりとした。
あまりにも前の時とは違いすぎて。

「こ、いずみ…?」
「それがあなたをある程度守ってくれます。必要以上に動かないように」

その言葉と共に古泉の体は真っ赤な球体に包まれる。
はっとしたときには奴の体は遙か上空に上昇していた。
待て、俺はお前を止めにきたはずなのにこうも簡単に置き去りにされるとは。

「待て、待て古泉────ッ!」

そう叫んだ声は、空しく俺をすっぽり閉鎖空間から隔離した球体の中で響くだけだ。
動こうにも動けなくて、俺は赤い球の行方を目で追うことしか出来ない。
古泉だと思われる赤い球は神人の周りを飛び回り、腕やら首やらをピンポイントに狙って切りかかっていた。
俺は唇を噛みしめてその様子を見つめる。
途中、からからとコンクリートが空中から俺に攻撃を仕掛けてきたが、青い壁が俺を守ってくれた。









続く


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