甘い眩暈5





僕はくすり、と笑うと彼をソファに押し戻す。
そして指を絡め取って、再度口付けた。
こんなに優しく触れられるのは初めてなのだろう。
戸惑いながらも、どうにか必死についてこようとする彼。
初々しい彼に少しばかりの悪戯をとばかりに、僕は唇の中に舌をねじ込んだ。
びくり、と彼の肩が大げさに揺れる。

「ん、んん──ッ!」
「ん、ふ…キスは初めて?」

そう問いかけると、彼はこくりと頷いた。
そうか、キスは初めてか…
じゃあそれ以上のことも、初めてなんだろう。
初めてのものを汚す楽しさ、快楽は何物にも代え難い。
さっきからいけない笑みが顔から離れてくれなくて、僕はなんて悪い人間なのだろうと頭の片隅で思う。

「可愛い…もっと楽しいこと、しませんか?」
「楽しい、コト?」
「そう…楽しくて気持ちいいこと…」
「うっ、えっ!?」

さわり、と僕がズボンの前部分を撫で上げたから驚いたのだろう。
彼は目をまん丸に見開いて僕の手と、目を交互に見比べる。
何をされるか、分かっていないのだろうか。

「セックス、しませんか?」
「セッ…っ!」

彼はやっと意味を理解したのだろう。
慌てて腰を引いたのだが、僕がそれを許すはずもなく、彼の腰を抱き寄せてズボンの上から大事な部分を撫で上げた。
途端、腰がびくりと跳ね上がり、腰を捩りながら彼は真っ赤な顔をして。

「古泉幕僚総長───ッ!だ、だめです!こんなこと…!」
「僕を愛して下さらないんですか?」

心底傷ついたとばかりに顔を歪めれば、騙された彼の顔はみるみるうちに泣きそうに眉が下がっていく。

「───ッ、違うんです!」
「何が違うんですか?」
「こ、こんなの初めてでどうして良いか分からな…っ!」

ぽろ、とまた涙がこぼれてしまったので、僕はそれを親指の腹で拭ってやった。
こうやって襲われるのが初めてだと彼は言ったが、信じがたい。
ほぼ男ばかりのこの軍の中で、彼はかなり中性的な顔立ちをしている。
だから、男にとっての性欲処理の対象になりかねないのだ。
軍ではよくある話だから、さほど驚かない話でもある。
とにかく、彼が誰にも汚されていないというのは奇跡に近いというわけで。

(誰か、彼を守っていた存在があったのだろう)












続く


あきゅろす。
無料HPエムペ!