黒の感情12




「お前、案外ガキ臭いんだな」
「…え?」
「相手に何も聞かずに暴走しやがって…どっかの少女漫画じゃあるまいし…」

そう言うと、古泉は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
たぶんこれが、本当の、素顔の古泉なんだろうな…なんて思いながら、俺はちょっとだけ笑った。
いつもはただ、にこにこと笑っているだけの奴の顔が赤くなったり、恥ずかしそうに歪められたりするだなんて。
人間らしい一面が垣間見え、なんだか嬉しい。

「本当に、すみません…」
「何度も謝るな、もう良いったら…俺がお前のこと好きで良かったな?じゃないと今頃世界は崩壊してるぜ」

そう、冗談まじりで言うと古泉はやっと微笑んでくれる。
その顔が古泉の偽物じゃない、本物の微笑みだと思えてますます嬉しくなって。
俺は無理矢理体を起こすと、古泉と同じ目線に合わせる。
今にも倒れてしまいそうな体を支えながら、古泉は俺を見つめた。

「辛いのだったら横になっておいた方がよろしいのでは…」
「言われなくたってそうするつもりだ。でも、その前に」

俺は手のひらを握りしめ、覚悟を決めると顔を傾けて、さっと古泉の顔に顔を近づけた。
正確に言うと、古泉の唇に自分の唇をくっつけた。

所謂、キス。

一瞬だけ、古泉の柔らかくしっとりした唇に自分のそれをくっつけると、どうしようもなく恥ずかしくなって。
俺は唇を離すと古泉の顔も見ずに、布団の中に逃げ込んだ。
今、とんでもなく顔が真っ赤に染まっているだろう。
同じように古泉も真っ赤になって、固まっているんだろうな。
動く気配がまったくしない。

「……キョン君」

沈黙をやっとのことで破いた古泉は、俺の肩に手を置く。
そして、こちらに顔を向けさそうと力を入れて引かれたのだが、俺がそれを許すはずがないだろう?
もう、恥ずかしくてたまらなくて、古泉の顔なんて見れやしない。

「キョン君…好きです、大好きです…」

そう言いながら、肩を揺さぶられて俺は戸惑う。
顔を向けるべきか、向けないべきかで葛藤していると。
迷いから力が抜けてしまった俺の体は、あっさりとひっくり返されてしまった。

「────っあ!」
「あなたからだけじゃ、ずるいです…」

僕だって、ずっとしたかったんだ、と古泉が呟くと同時に暖かな唇が重なる。
じんわりとそこから好きの気持ちが伝わってきて。
ああ、なんて幸せなんだろう。




俺はゆっくりと古泉の肩に手を回し、目を閉じた。














end


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