黒の感情10




何も考えられなくなっていた俺はぴたり、と動きを止めてしまった古泉をぼんやりと見上げた。
なぜやめてしまうんだ、早くしてほしい。
早く、終わらせて。

「な、に言ってるんですか?」
「ふ、ぇ…っ!ひゃ、あぁ!」
「勘違いさせないでくださいよ…あなた、他の人にもお尻の穴、犯されたんでしょう?」
「違う、ちが…ヒイィ!?」

酷く屈辱的なことを言われて、俺は涙を流した。
違うのに、確かに一人でするときに少し、後ろもいじったけれども。
それでも、他の人にされたいだなんて、思ったことはミジンコ程もない。
こんなことされたいと思うのは、古泉だけだから。

古泉が、好きだから。


「こいず、みぃ…こい、ずみ…」
「何ですか」
「信じて、くれよ…俺、俺…!」

そう、乞うたけれども。
古泉は困ったように笑うだけで、何も言ってくれない。
俺は譫言のように古泉、古泉と呟き、喘ぎながら奴の顔を見つめた。
何だか、寂しそうなその顔。
何でそんな顔するんだよ、なんでそんな顔できるんだよ。
俺は情けなくて、悔しくて顔を歪めた。
すると、古泉は俺の前髪をかき上げながら小さな声で問いかけてくる。

「何を、信じたら良いんですか?他の人としてないだなんて確証、ないでしょう?」

おまけにあなたのアナル、すっかり具合が良くなってますしね、と笑う。
そうかもしれない。
確かに、信じられないかもしれないけど。
でも、でも、俺は、古泉のこと。

「好き、だからぁ…好きだから他の人となんか、したくない…!」
「…は、ははっ…何を言うかと思えばそんな戯言…」
「ふぇっ…あ、違う、違うぅ…!ひあぁ!」

いきなり古泉の律動が早くなる。
驚いた俺はぎゅうぅ、とさらに強くペニスを握りしめた。
すぐに、イってしまいそうだ。
それまでに、信じて欲しい。
別に、返事はしなくて良いから。
ただ、古泉のことが好きだ、という気持ちだけは信じて欲しい。

「すき、すき、あっ、ヒッ!す、きぃ…!」
「勘弁してください、五月蠅いです」
「やっ、やらあぁ!ひ、す、き…うぅ…」

信じてもらうまでは絶対に好き、と言い続けてやる!と意地になった俺は何度も、何度も好きと繰り返した。
そう呟けば呟くほど古泉の律動は激しさを増す。
もう限界だったペニスが手のひらの中でびくびくと震えているのが分かった。

「信じませんよ、そんなのは」
「好き、なんだぁ…ふっ、古泉だけ…好き…」
「もう、言わないでください!」

古泉は顔を歪めて俺の手を無理矢理引き離す。
それをソファに押さえつけて、無茶苦茶に俺を揺すり動かした。
精液をせき止めることが出来なくなって、俺は顔をくしゃくしゃにして叫んだ。

「らめっ!い、ぐぅ…!や、やらやらぁ!」
「僕を、っ、惑わさないで…!」

目の前が真っ白になり、熱が放出される感覚に体がびくびくと跳ね上がる。

遠ざかっていく意識。
ぼんやりと霞んだ世界の中で、泣きそうな古泉の顔が見えた。










続く


あきゅろす。
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