黒の感情3






目を見開き、あたりをきょろきょろと見回す。
場所は古泉の部屋から移動した気配はなく、見慣れた部屋が目に入った。
完全に混乱した俺は足を僅かながら動かし、とにかく下半身が見えないようにと必死で覆い隠す。
しかし、それ以上に抵抗らしい抵抗など出来るはずもない。
体は鉛のように重く、俺から自由を奪った。
混乱していても、むちゃくちゃに暴れることが出来ないのが、こんなにも辛いものなのか思い知る。
嗚呼、今すぐまた気を失ってしまいたい。

「ふふ、そんなに怖がらなくても良いですよ」

古泉は不気味に笑うと、俺の頬を撫でた。
ふいっ、と顔を背けると、さらに楽しそうに笑い声が降ってくる。

「躾がいがありそうですね」

誰が誰を躾けるんだ。
そんなつっこみを心の中で冷静に入れつつ、俺はどうにか逃げようと腕に力を込めた。
先ほどよりかは力が入るかもしれない、上体が少しだけ持ち上がる。
それでも逃げ出すには到底力が足らない。
俺が一人もがき苦しんでいるのを古泉は相変わらずの余裕の表情で見下ろした。
たまらなく悔しくて、せめてもの抵抗とばかりに睨みあげてみるが、やはり効果はない。
そんな俺の努力は空しく、古泉の魔の手は伸びてくる。

「お、まえ…!?」
「思っていた以上に綺麗な体ですね、綺麗ですよ」

歯の浮くような台詞を言われても、今の俺にはまったく嬉しくなかった。
言われるのなら、そう、お互いの気持ちが通じ合ってから…
そこでふと気付く。

(古泉は俺のことが好きで、こんなことをするのか?)

それならそうと、初めに一言、あの重要な単語を言ってくれていたら良かったのに。
だったら少しは、この行為も好きに慣れたのかも知れないのに。

でも、もし古泉は俺をただの性欲処理で使おうとしているのなら。
だったら俺はどうしよう。
いや、どうも出来ないのはわかっているのだが、死にたいくらい悲しいことだと思った。

聞きたい、でも、聞けない。

「や、やだ…!」
「抵抗するなら好きなだけしてください、そっちのほうがより僕の劣情に火を付けますがね」

そう言われて、もう逃げ場がなくなった俺はただただおろおろと視線を泳がせる。
そんな俺の胸板にするり、と大きくてきれいな手が這わされた。
ぞわぞわ、と肌が粟だつ。
ゆっくりと肌の感触を楽しむように動かされていた手は、次第に意思を持って動き出した。
指先が触れるか触れないかのタッチで乳首の周りをするりと何度も撫でられる。
そうされれば、否応なく乳首が硬くしこった。

「赤くてツンッとしてますね、ここ」

まだ一度も触られていないのにも関わらず、真っ赤に腫れてしまったその箇所が恥ずかしくてたまらない。
触ってもいいですか、だなんて耳元で呟かれて、俺は必死に首を左右に振った。







続く



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