黒の感情




「今日、遊びに来ませんか?面白いゲーム手に入れたんです」

そう言って、古泉はいつも通り笑った。
俺はいつも通りのその笑顔に騙されて。
何も危機感を抱くことなく、奴の後ろに付いていってしまったのだ。


ほんの少し、好意を抱いていた古泉に誘われて、ほんわり暖かい気持ちになりながら…












いつも通り、奴はホットココアを差し出すと俺に握らせる。
その隣でこいつはブラックのコーヒーか…
なんだか悔しいが、残念ながら俺はブラックは飲めない。
ちまちまとココアを飲みながら、後ろにあるベッドに背中を預けた。

「で、何だ?面白いゲームって」
「ええ、これです」

そう言って奴が取り出したものに俺は顔をひくり、と歪ませる。
なぜならパッケージには美少女が喘ぎ苦しむイラストが描かれていたからだ。

「おまえ、これどうしたんだよ…」
「クラスのお友達に押しつけられました、あまり興味はなかったのですが」

困ったように笑って、古泉はディスクを取り出した。
パソコンにセットしながら奴はまだ喋り続ける。

「しかし、やってみるとなかなか非現実的な感じが面白くてですね」
「やったのかよ…」

俺はがくりと肩を落とした。
こんなイケメンがエロゲをプレイしただなんて、こいつに好意を寄せている女の子が知ったらどうなるだろう。
イメージが崩壊するだろうな、と俺は嘆息せざるを得ない。
しかし、古泉はというと相変わらずにこにこしながらパソコンをいじる。

「非現実的だからこそ、憧れに似た欲望が芽生えてしまいますよ」
「…は?」
「可愛いあの子を無理矢理にでも犯して、手に入れたいと言う、何とも卑怯なあれです」
「そうかいそうかい」

俺は古泉の言葉に適当に相づちを入れながら、ココアを啜る。

というか、内心では古泉には無理矢理にでも手に入れたい子がいるのか、と思って悲しくなっていた。
やっぱり、それは男の俺に向けられる感情ではない。
そんなの、分かり切っている。
だからこそ、切なくて悲しくなった。

「そこで僕も、無理矢理にでも手に入れたくなったんです」
「は?何をだ?」
「ふふ…いずれわかりますよ」

古泉は意味深に微笑むと、何を思ったか早速立ち上げていたパソコンの電源を落としてしまった。
何がしたいんだ、俺には理解できん。

とにかく、気を散らす為、いつもより早いペースでココアを飲み干してしまった。


それがいけなかっただなんて、全く思いもしないで…








続く


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